科学の力で、スポーツ競技の運動動作を解析しよう
ヒトの身体は微弱な電気が動かしている
例えばあなたが剣道の試合をしていると想像してみてください。「それ、今だ。面を打とう!」と思った瞬間に、身体が動くはずです。頭の中に生まれた「打とう」という意識が筋肉を動かします。では、脳の意識はどのようにして手足の筋肉に伝わるのでしょうか。
ポイントは微弱な電気です。0.1ボルト程度の微弱な電気が、一瞬のうちに神経を伝わり、筋肉に脳の指令を伝えます。その結果、筋肉が収縮して足を踏み込んだり、頭上高くに構えた竹刀(しない)を振り下ろしたりできるのです。
電気の流れと関節の位置で身体の動きを測る
微弱な電気が身体の動きをコントロールしているのなら、その電気の流れをつかめば、身体の動きを読むことができるはずです。それを可能にしたのが、筋肉に流れる電気を測る筋電図です。一流選手の身体の動きを筋電図データから分析し、同じ動きを再現できるよう訓練すれば、効率的なトレーニングになるはずです。
筋電図以外にも一流選手の動きをとらえる方法があります。「モーションキャプチャ」と呼ばれ、ヒトが動いている姿をカメラで撮影し分析する方法です。筋電図では筋肉の動きに焦点を絞りますが、モーションキャプチャで注目するのは関節の動きです。ヒトの身体を関節で区切り、身体を動かすときにどの関節がどのように動いているのかを分析するのです。
理想的な身体の動かし方を数値化する
モーションキャプチャを使うと、関節の位置を数値で表現できるようになります。例えばボールがバットに当たる瞬間の膝の角度を測り、ホームランバッターの膝の角度をまねることで、非力なバッターでも飛距離を伸ばせる可能性があるのです。また、関節の位置の数値に基づいて、健康的な運動方法の提案も可能となるのです。
ヒトの身体の動きは、体内に流れる電流や関節の動きに注目し数値化することで、可視化できるのです。これらのような科学的データを基に動作をマスターすれば、競技力向上だけでなく、健康増進にも役立てることができるでしょう。
参考資料
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