スマホに表示した画面が、自動で回転するのはなぜ?

スマホに表示した画面が、自動で回転するのはなぜ?

小さなセンサーが果たす大きな役割

スマートフォンを傾けるだけでディスプレイに表示した画像を回転できるのは、重力の方向を検知するセンサーが入っているからです。このようなセンサーの原理で最も単純なものは、橋のように浮かせた部品のたわみや動きの重力による変化を測っています。このようなセンサーはMEMS(メムス)とも呼ばれ、自動車、デジタルカメラ、ゲーム機などの身近な製品に搭載されています。構造はシンプルですが電子機器に搭載するには1ミリメートルの何百分の一、ときには何万分の一といったサイズで作らねばならず、あまりにも小さいため材料を切り、削り、組み立てることがとても難しいので、小さな部品を作るには、特殊な加工技術が必要なのです。

現行技術の限界とデメリット

電子回路やセンサーを作るには、半導体プロセスという写真技術や腐食加工が応用されています。この技術自体は既に成熟し、さまざまな微細部品が作れるのですが、高温での薄膜作製、あるいは酸やアルカリ溶液に浸けるといった工程を何十回も行うため、非常に手間がかかります。特にセンサーが必要とする立体構造を作るのが難しく、まず三層の構造を作り、真ん中の層の一部を取り除くことで作っています。また、装置が高価なことから、ある程度の市場規模が見込める製品にしか投入できません。

手軽に立体構造を作るには

低コストかつ簡易に構造を作る技術として考えられるのが、下地となる材料に凹凸を作り、スタンプの要領で架橋部を押し付ける方法です。うまく接着、あるいは剥離するために、表面をどう加工するかが難しいのですが、材料の選択肢は広がります。高温や薬品に耐えうるガラスやシリコンでしか作れなかったものが、PETフィルムなどの高分子材料も使えます。高分子材料の利点は柔軟性があることで、例えば洋服に貼り付けるセンサーなどのフレキシブルデバイスも作ることができます。このようなデバイスはヘルスケア、快適な生活や事故防止などに役立つので、安全・安心な社会の実現に貢献できると考えられます。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 准教授 金子 新 先生

東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 准教授 金子 新 先生

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機械工学、加工学

メッセージ

顕微鏡を使わないと見えないくらい小さなものを作るとなると、材料がもつ物理的・化学的な性質を利用する場合が多く、いわゆる加工という概念だけでは通用しません。自分なりに筋道を立てて考え、ある程度の予測に基づいても、思い通りの形になるかどうかはわからないのです。しかし、だからこそ面白いし、なぜうまくいかないのかを考える面白さもあります。
大学で研究するのは20年後、30年後の世界を見据えた、基礎的な内容です。その分、世界で初めてのものに出会ったり、それを実際に扱ったりできる可能性も秘めているのです。

先生への質問

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