動物的なカンを発揮して、危機回避ができるロボット
ロボットを動かすさまざまな仕組み
人間と同じような動作や思考ができるロボットの研究が、さまざまに取り組まれています。その一つに、人間の脳の仕組みをモデル化した「人工知能」があります。
しかし、人間のすべての動作が、脳からの指令で行われているわけではありません。例えば、「歩く」という動作は、一定のリズムで足腰の筋肉を動かすことで成立しますが、このリズムを作り出しているのは、脳ではなく脊髄の神経回路です。地面の段差や傾斜を認識して、転倒しないように手足のリズムを修正するのも脊髄です。脊髄の神経回路をモデル化することで、ロボットはより人間に近い歩行が可能になります。
人間の「本能」をモデル化する
一方、人工知能はきわめて高度な思考が可能になっており、チェスや将棋で人間のチャンピオンに勝つ人工知能も誕生しています。しかし、人間の脳は高度な思考ばかりでなく、動物的な本能に基づく行動も担っているのです。
例えば、人間は危険にさらされたとき、「逃げる」「隠れる」「闘う」など、その場に合わせた行動を瞬時に選択します。あれこれ思考をめぐらす前に、危機回避の最適な行動を、反射的に起こすのです。こうした行動は、脳の中心部にある「扁桃体」や「視床下部」という部位が担っていますが、この部分の仕組みをモデル化することで、思考を介さない本能的な行動を、その場の状況に合わせて瞬時に起こすロボットを作ることができるのです。
未知の環境でも、危機回避ができる
こうしたロボットは、人間が想定した危険に反応するだけではなく、想定外の危機にも対応できます。なぜなら自分の生存にとって○か×かという、いわば動物的なカンを、ロボット自身に持たせるからです。したがって、人間が近寄れない危険な場所や、未知の環境下で、ロボット自らが危機回避をしながら、必要な仕事をすることができるようになるのです。
放射線が強くて近寄れない場所や宇宙空間、あるいは人間の生活の場などで、こうしたロボットの活躍が期待されています。
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