心を測る:心理学と工学のコラボレーション

心を測る:心理学と工学のコラボレーション

心理学と行動の測定

心理学の研究者や実践家にとって、行動の測定は重要な営みの1つです。例えば、悩みごとがあって相談にきた人がいたとしましょう。その人の悩みごとを丁寧に聞き取っていくと、「ある行動ができない」あるいは「ある行動をやりすぎてしまう」といった姿がみえてくることがあります。そのとき、問題とされる行動を測定すると、支援を始める前の悩みごとの程度を客観的に知ることができます。また、支援を始めた後も行動を測定し続けることで、その行動が変化したかどうか、つまりは提供した支援によって課題の解決や目標の達成ができたかどうかを明らかにすることができます。

行動の測定とテクノロジーの活用

行動の測定にテクノロジーを活用することで、心理学の研究と実践を最適化しようという試みがあります。例えば、GPS(全地球的測位システム)やモーションキャプチャなどの工学機器を用いて、コミュニケーションの苦手な子どもとその周囲の子どもや大人とのやりとりの様子を調べた研究があります。近づいたり離れたりといった子どものダイナミックな行動を工学機器は自動的かつ連続的に測定することができるため、人の目では追いきれなかったコミュニケーションの様子がそこから浮かび上がってくるのです。

今後の学問の発展のために

さまざまな分野の専門家が知識や技術などを持ち寄り、お互いの分野に対して貢献しあうことで、学問はさらに発展していきます。上述のテクノロジーの活用例は、心理学と工学の専門家がコラボレーションすることで得られた研究成果でした。ここでは行動の測定に焦点を当てましたが、テクノロジーは行動を変えるための支援にも活用されており、工学の知見によって心理学の研究と実践の可能性は大きく広がっているといえます。心理学の発展だけでなく、心理学が行動の科学として他分野にどのような貢献ができるのかを考えることも、今後のコラボレーションを進めていく上で求められることになるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

専修大学 人間科学部 心理学科 准教授 塚本 匡 先生

専修大学 人間科学部 心理学科 准教授 塚本 匡 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

心理学、臨床心理学、応用行動分析学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたは人の心について「なぜ」と考えることはありますか。もし、あなたが大学に入って心理学を学びたいと思うのであれば、その「なぜ」という問いを大事にとっておいてください。人の心について断定的に論じることは難しいのですが、心理学を学ぶと、その答えに近づくための知識や技術を身につけることができます。自分自身や周囲の人と向き合う中で芽生えた「なぜ」という問いは、心理学を学ぶための原動力となってあなたを支えてくれるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

専修大学に関心を持ったあなたは

専修大学は、1880年(明治13年)に経済科と法律科からなる専修学校として創立されました。「経済科」は日本初の、また「法律科」は私学で初の高等教育機関でした。2024年に創立145年を迎える、日本でも屈指の伝統を持つ大学です。社会科学、人文科学、総合科学、の3系統、8学部20学科からなる社会人文系総合大学として、「自ら問題を見つけ主体的に解決する知力」と「人間力」、「倫理観」を持った人材を育成しています。まずはオープンキャンパスの大学紹介や模擬授業に参加して、大学の雰囲気を体感してみてください。