人口減少社会は悪いこと? 思い込みを捨てて考えてみる
人口減少社会とは
出生率の低下が長く続く日本は、世界に類を見ない人口減少社会に突入しています。労働力も減少し続けており、地方では自治体運営が不可能になる「消滅可能性都市」の増加も懸念されています。そもそも「人」「口」と書くように、人口とは本来消費者の数を意味する言葉ですから、人口減少は市場縮小であるととらえられています。現在の社会は「経済成長」を最優先につくられているため、市場を縮小して経済成長を妨げる人口減少は悪者とされているのです。
経済成長最優先でいいのか
しかし、人口が減少すればエネルギー消費の総量が減り、交通渋滞も緩やかになって、環境負荷は減ります。また人間同士の競争が緩やかになり、一人一人の個性が際立ち、心穏やかに暮らせるようにもなるでしょう。労働力についてはAIやロボットなどのテクノロジーによってカバーできる余地があり、地方の問題についても、住んでいる人の数ではなく、その地域に出入りして貢献してくれる「関係人口」を増やすことで、街に活気をもたらすことができるでしょう。
そもそも、私たちは単に消費をするだけの存在ではなく、それぞれに個性や夢があり、お金以外の幸せや豊かさを追求する側面ももっています。つまり、「経済成長最優先」という前提を外せば、人口減少を悪であるとは言い切れないのです。
思い込みを排して発想する
経済最優先の地域活性化においては、市場調査やマーケティングによって消費者が求めるニーズを明らかにし、ニーズに見合った地域づくりをするという考え方に傾きがちです。しかしそのやり方で地域の観光スポットや特産品が人気を集めたとしても、一部の関連業者が潤うだけで、一般住民はしらけ切っているという事例はよく見られます。それよりも、例えば地域で伝統的に営まれてきたありのままの暮らしぶりを大切にし、訪れたお客さんに体験していただくといった、市場規模やマーケティングに依存しない活性化の方法もあるはずです。思い込みを排して発想すれば、新しい社会のあり方も見えてくるのです。
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関東学院大学 法学部 地域創生学科 教授 木村 乃 先生
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