エンタメやスポーツに革命を! カメラを使わず動きをとらえる技術
楽器演奏の様子をどうとらえるか
楽器の演奏を学ぼうとするとき、講師の演奏を見て・聞いてまねをしたり、生徒の演奏を見て評価したり、といった方法がほとんどです。しかし、細かなところは見るだけではわかりません。
人間の体の細かな動きを客観的にとらえるなら、カメラ撮影が基本です。高速カメラで撮影してスローモーションで見るほか、体にマーカーをつけて撮影したデータをコンピュータで解析する「モーションキャプチャ」などです。しかし、体にいくつものセンサを着けることが動きの邪魔になる、撮影装置が大がかりになるなどのデメリットがあります。
目にもとまらぬ動きをキャッチ
そうした問題をカメラ以外の方法で解決したのが、「加速度計」と単位時間あたりの回転角度を測る「角速度計」などを一体化した、手首に着けられるウェアラブル・デバイスです。手の動きを角速度と加速度でとらえて計算・解析して、そのデータをリアルタイムでモニターに転送して可視化するのです。
このデバイスの基本には、約1000分の1秒という単位で角速度と加速度を測れるようになった技術革新があります。人間の目でとらえられる速さは100分の1秒程度、スマートフォンのカメラであれば100~200分の1秒ですが、ギター奏者の「目にもとまらぬ」手の動きは、1000分の1秒という単位でなければとらえられないのです。
ギター教室の生徒たちがこのデバイスを着けた実験をしたところ、20人同時に演奏しても、講師は生徒一人ひとりの技量を瞬時に見ることができて、効率よく適切な指導ができました。
ダンスやスポーツの採点にも
このデバイスは、楽器演奏の教育だけでなく、ダンスやフィギュアスケートの審査にも応用できます。動きの邪魔にならないこのデバイスを着けて、数値で客観的に評価できれば、審判の目で見て判定する競技であっても、あいまいさや見間違いを排除して採点できます。将来、エンターテインメントやスポーツの世界に、革命を起こすかもしれない技術なのです。
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先生情報 / 大学情報
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科 教授 松下 宗一郎 先生
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