宇宙、スポーツ、エネルギーに共通する「流れ」の科学
流れを操ることで見えてくる
「流体」とは自由に流動して形を変え、それが元の形に戻らないもので、身近なものでは空気や水になります。その空気や水などの流れを操り、さまざまなことに生かそうという学問が「流体工学」です。
例えば、小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルは、直径約40cmの中華鍋のような形をしていますが、もう少し平らな形や先が尖った形だったら、宇宙から大気圏に再突入する際の空気の流れで、カプセルにかかる力は大きく変わっていたでしょう。小惑星探査機「はやぶさ」は、設計の段階で空気や熱の流れを細かくシミュレーションし、無事ミッションを達成したのです。
野球の変化球を分析
ピッチャーが投げる変化球の一つに「ジャイロボール」があります。この球種の特徴は、進行方向と回転軸が一致したドリルのような回り方でボールが進んでいくことです。これによってボールが打者の手元で伸びたり、手前で落ちたりという変化が起こります。さらにボールの縫い目を使い、握り方を変えて投げることでも空気の流れは異なります。これらは4シームジャイロ(ボール1回転で縫い目が4回通過する)や、2シームジャイロ(ボール1回転で縫い目が2回通過する)と呼ばれます。前者はボール後方の空気の流れの乱れが少なく、投げてからの速度があまり落ちません。後者はボール後方の空気の流れの乱れが大きく、落差の大きい軌道を描くことが特徴です。
潮の流れで発電する試み
流体工学はエネルギー分野でも活躍しています。北九州市門司区に面する関門海峡は、激しい潮の流れが有名で、その速さは秒速4mほどにもなります。この潮の流れを利用して水車を回し、発電しようという計画が進行中です。錆びやすい海中で回転の潤滑をどう行うか、ブレードにフジツボなどが付着して性能を損なわないか、など海ならではの問題はありますが、安定的に自然エネルギーを利用する技術として期待されています。
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