人間の「目」を持ったロボットを開発する
周囲を空間的に把握するのが苦手なロボット
ロボットは、周囲の状況を把握してはじめて、自分で移動したりものをつかんだりという自律的な行動が可能になります。そのためには、人間の目のような働きが必要です。人間は、周囲の状況を一瞬で空間的に認識することができます。机の向こうに椅子があり、その先に壁があるというように目で見える対象はもちろん、対象と自分の位置関係も把握します。だから、障害物をよけて移動したり、ものをつかんだりという行動ができるのです。
しかし、ロボットの場合はこのような空間的な認識が苦手です。ロボットのカメラに映るのは平面映像であり、そこには色の差や濃淡、境界しかありません。そのような平面の情報から、モノの形を認識し空間的な位置関係を認識する技術は、まだ実用化のレベルまで達していません。また、ロボットは機械なので、対象までの距離を正確にあくまで数値として把握することが必要になります。自分の位置も同じように対象との距離をもとに割り出しますが、距離を算出できる対象ははっきりした形に限られます。人間のように、周囲の状況を柔軟に見ることはできないのです。
人間と同じ生活環境で活躍するロボットを開発
平面映像から3次元の映像情報を創り出す技術を「ビジョン」と呼んでいます。今の段階では、周囲をロボットが認識できる人工的な環境にすることで、やっとロボットは自律的に行動することができます。ロボットは人間と比べ、環境から得られる情報はあまりに少なく、認識能力も格段に劣っているのが現状です。しかし、画像入出力装置の進歩と、コンピュータの処理能力の高速化によって、そのような問題も少しずつ解消されていくでしょう。以前には実現が不可能だった技術も、ハードウェアの進化によって、ロボットへの実装が可能になります。研究者の理論的、技術的な探求もさらに進むと考えられます。人間と同じ生活環境で活躍する、自律ロボット開発への期待は今後ますます高まっていくでしょう。
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