効率的にモノをかき混ぜる鍵は、カリフラワーにあり?

効率よく混ぜるには
ものづくりの過程では、物質を混ぜる「撹拌(かくはん)」という工程がよく登場します。例えば化粧品の乳液やクリームの製造にも、油の成分と水の成分を混ぜ合わせるための撹拌が必要です。撹拌に使われる撹拌機は、大きなタンクにモーターで回転する翼が付いた単純な構造です。ただし、効率的な流れを起こして混ぜるためには、液体の種類ごとに適切な形の回転翼を作る必要があり、一筋縄ではいきません。そこで、回転翼と水の流れ方の関係についての基礎的な研究が行われています。
フラクタル構造に着目した回転翼
流体の研究が難しい理由の一つは「流れ」が目に見えないことです。それを可視化するために、水と密度が同程度の微粒子を使う実験方法があります。微粒子の動きを高速度カメラで撮影し、画像を解析して速度ベクトルの分布図を作り、より効率よく撹拌できる回転翼の形を検証するのです。
水を撹拌すると乱流が起こり、小さな渦がたくさん発生して混ぜる効果につながります。渦は自発的に壊れてより小さな渦へと分裂していきますが、そこには全体と部分が相似の関係にある「フラクタル構造」が見られます。そこで逆に、回転翼をフラクタル形状にすることが検討されています。通常、回転翼の羽根は長方形なのに対し、回転翼の先端をロマネスコ(カリフラワーの一種)のような形状にするものです。大小さまざまな渦を生み出すことが狙いですが、その効果についてはこれから検証が進められます。
求められる高精度なシミュレーション
このような流体運動の解析にはコンピュータシミュレーションも役に立ちますが、実用的な撹拌槽内の乱流現象を再現できるまでには至っていません。そのため、実験で得られたデータをフィードバックして、シミュレーションの精度を確認する取り組みも行われています。流体運動の方程式は一見シンプルですが、数学的に解の存在が証明されていないため(ミレニアム問題)、シミュレーションではあくまで近似的な解を求めて流れを再現しているにすぎないのです。
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福岡大学工学部 化学システム工学科 教授鈴川 一己 先生
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