自然をヒントに、金属材料に新しい機能をプラスする

自然をヒントに、金属材料に新しい機能をプラスする

金属材料の強化と機能付与

金属製品の機能強化のため、表面の加工や材料強度の強化で新たな機能を付与する研究が行われています。わかりやすいのは、キッチンのシンクやフライパンへの応用です。シンクはステンレス素材が使われることが多く、材料自体に特別な加工はされていないものがほとんどです。ここに水分となじみやすくなる「親水性」を付与できれば水が広がりやすくなり、反対に「撥水(はっすい)性」を付与できれば汚れにくくなります。また、フライパンの表面加工は、フッ素樹脂コーティングが主流です。しかし、これは耐久性が低く、安定した加工には大掛かりな製造設備と超高温高圧の下での作業が必要となるため膨大なエネルギーコストがかかります。そのため、これに代わる新たな技術の開発が求められています。

生物の表面パターンをまねる

撥水性の実現には「ハスの葉」を、親水性には「カタツムリの殻」の微細な表面形状のパターンを参考に研究が進められました。そして、そのパターンを模した機械加工を金属材料の表面に施したところ、撥水性や親水性の付与に成功しました。この加工方法は「ショットブラスト加工」といい、投射材と呼ばれる粉体を材料に衝突させる方法です。この設備は金属加工の工場には必ずあるものなので、新たな設備導入が不要なのが利点です。

冷凍庫や屋根への応用

今後の展開としては、冷凍庫の熱交換器周りや雪国の屋根材への応用が考えられます。熱交換器周辺に撥水加工をした金属材料を使用すれば、ヒーターなしでも霜がつきにくくなり、今までより冷凍庫の電気代を抑えられるかもしれません。また、雪国の屋根材に使用すれば、雪下ろしの作業が楽になるのではないかと考えられます。どちらも必要な素材や加工、耐久性などについてさらなる調査と実験が必要ですが、こうしたものづくりのアイデアが私たちの生活をより良い方向に導いてくれるのです。

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大阪産業大学 工学部 機械工学科 准教授 南部 紘一郎 先生

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メッセージ

エネルギーロスを減らしたり自然環境を保護するために、自然界の現象を模倣したものづくりに変化しています。このような世の中の変化に対して、理工系の知識を生かして人の困りごとを解決していける点もエンジニアリングの醍醐味(だいごみ)です。さまざまな現象にアイディアの種があり、興味関心を育てるためには、読書の習慣を持つことをおすすめします。ネットの情報では情報量が多く正誤もわかりづらく、過程を省いた知識が横行している印象です。結果だけではなくその過程を知ることで、知識は積み重なっていきます。

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大阪産業大学機械工学科は、なんで機械工学科に入学したの?と学生に尋ねると、「モノづくりに興味があったから!」と多くの学生が答えてくれる、楽しそうな・面白そうな雰囲気のあるところです。
機械工学の基礎である「力学」の教育に重点を置く一方で、今後成長の見込める医療・福祉・健康といったヘルスケア分野や、ロボット工学、宇宙工学といった先進的な領域も取り入れた授業も用意されています。創造的で発想力のある感性豊かなエンジニアの育成を教員一丸となって取り組んでいます。