次世代半導体の量産化の鍵はエッチングにあり

次世代半導体の量産化の鍵はエッチングにあり

製造が難しい化合物半導体

現在の半導体材料の主流はシリコンですが、次世代の半導体材料として「化合物半導体」が注目を集めています。窒化ガリウムや酸化ガリウムはシリコンをしのぐ高温・高電圧耐性を持つため、それを用いた半導体はパワーデバイスや高周波デバイスなど、幅広い応用が想定されます。しかし、単一元素で構成されるシリコンに比べて2種以上の元素の化合物による半導体は、製造プロセスの難易度が各段に上がります。

2種のエッチングを組み合わせ

これらの化合物は高品質な結晶の製作が難しく、結晶の欠陥が避けられません。その影響は、製造工程の要であるドライエッチング工程で顕著に現れます。ドライエッチングは、半導体材料を薄い円盤状に加工した板(ウェハ)に、反応性のガスを高速でぶつけて表面に微細な加工を施す工程です。化合物半導体のウェハにドライエッチングを施すと、結晶欠陥に起因する柱状の突起(ピラー)が形成されてしまうのです。ピラーがあるとデバイス特性の劣化につながるため、その形成を抑えなければなりません。最新の研究で、ドライエッチング後に、薬液に浸けて加工するウェットエッチングを行うことにより、ピラーをなくす可能性が見いだされました。薬液によって、ピラーが小さくなる度合いや小さくなるまでに要する時間が大きく異なることもわかっています。その理由はまだ明らかではありませんが、化合物の物性の面でも興味深い現象であり、今後の研究が待たれます。

製造時間の短縮などにも貢献

化合物半導体のウェハはシリコンウェハに比べて高価なため、それを材料とする半導体製造はより高い良品率が求められます。また、産業としては製造にかかる時間の短縮や、装置の大きさ・費用の縮小も重要です。ウェットエッチングは、ドライエッチングに比べてコンパクトな装置で同時に多数のウェハを処理できます。そのため、両者を組み合わせる方法は良品率向上以外のメリットもあり、次世代半導体の製造に大きく貢献することが期待されます。

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九州工業大学 情報工学部 物理情報工学科 准教授 新海 聡子 先生

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