無人飛行機で挑む! 南極の大気中微粒子の観測

無人飛行機で挑む! 南極の大気中微粒子の観測

極限の環境で活躍する無人飛行機

自動操縦で飛ぶ「無人飛行機(UAV)」の技術(自律飛行)の研究が盛んに行われています。無人飛行機を使えば、極寒の南極や気温差の激しいアフリカの未開発の地域など、人が出かけることが困難な場所でも観測を行うことができます。
2013年、小型無人飛行機と気球を組み合わせた世界初の方式で、南極での観測が行われました。ミッションを成功させた飛行機は翼幅2.9m、最初は気球にぶら下がった状態で上昇し観測を行います。そして上空10 kmの地点で気球から切り離された後は、何10kmも離れた地点から自動操縦でもとの場所まで戻ってくるというものです。

大気中の微粒子を観測

観測の目的は2つありました。1つは、地球大気中の物質がどのように循環しているのかを調べるため、大気中の微粒子(エアロゾル)の濃度を観測することです。そしてもう1つの大事な目的は、エアロゾルのサンプルを持ち帰ることです。近年、PM2.5という2.5ミクロン以下の微粒子による大気汚染が問題視されていますが、地球規模で微粒子の流れを調べるには、南極でも観測を行う必要があります。大気の循環の仕組みがわかれば、今後の地球温暖化を予測するヒントにもなるのです。従来、このような観測には、気球を使うのが一般的でしたが、無人飛行機で行うことによって、観測回数を飛躍的に増やし、これまで難しかったサンプルを持ち帰ることが可能になりました。

工学と科学の関係

大気中の微粒子の循環を解明するには、より高い高度での観測も行わなければならないので、次回に向け高度30kmの成層圏でも観測できるような飛行機が開発されています。成層圏では気温がマイナス80℃近くまで下がり、気圧も地上の100分の1とさらに過酷な環境になるため、うまく飛行させるためにはさまざまな工夫が必要です。
実は、工学技術と科学は車の両輪のような関係です。工学の研究が進めば、自然界の謎も徐々に解き明かされ、科学の発展につながるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

九州大学 工学部 機械航空工学科 航空宇宙工学コース 准教授 東野 伸一郎 先生

九州大学 工学部 機械航空工学科 航空宇宙工学コース 准教授 東野 伸一郎 先生

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飛行力学

メッセージ

私の研究室では、自律飛行システムを備える無人飛行機(UAV)の研究を行っています。南極やアフリカなど極限の環境下で、人が操縦しなくても自動で飛んで帰還することができる飛行機を開発するのは、失敗も多く試行錯誤の連続です。しかし、自分で考え、さまざまな状況下で課題を発見しては解決し、造り上げた飛行機が実際に空高く飛んでいるところを見ると、苦労などは吹き飛んでしまいます。自分の手でものを造り、研究することに興味があるあなたは、ぜひ九州大学の私の研究室に来てください。

九州大学に関心を持ったあなたは

九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。