管理するより受け入れを 日本の移民政策を考える
移民と政策
日本政府はこれまで、近年の技能実習生を含む海外からの移民を受け入れてきました。第一の移民の波は、1945年の終戦までの期間に植民地であった韓国・朝鮮や台湾などから日本にきた人たちです。第二の波は、1980年代に建設現場などで働くために訪れた東南アジアや韓国、中国の人たち。そして第三の波が、現在技能実習生として働く東南アジアを中心とした人たちです。それぞれの時代背景に合わせた形で移民を受け入れるために、政府はさまざまな政策をつくってきました。
政策からこぼれおちる存在
政策とは、本来人のためにつくられるものです。しかし、すべての政策が必ずしも人のためになることはなく、またその政策からこぼれ落ちてしまう人も出てきます。例えば、さまざまな事情から就労ビザをもたずに日本で働く「非正規」の移民もいます。こうした人たちは本来受けられる保障や、権利の行使から遠ざけられて苦しい思いをしていることが少なくありません。特に女性は、性的属性を理由として性風俗産業などに従事せざるを得ず、危険な目に遭うケースや、日本人との間に生まれた子どもを認知してもらえないケースも生じています。
データから読み取れないもの
移民政策を研究するうえでは、各種の統計データを分析することが有効です。ただ、移民の中でもさらに「非正規」「マイノリティ」と位置付けられて苦しい立場に置かれた人たちの実態は、データから読み取れないこともあります。移民や政策研究をするためには、そうした人たちが暮らすコミュニティに出向いて直接声を聞くことも重要です。特に日本では、移民を「いずれは自国に帰る」「自分たちとは異なる存在」と見なす傾向があります。政策においても彼らを「受け入れる」より「管理する」側面が強かったことは否めません。人口減少が進み、今後日本が本格的に移民を受け入れるのであれば、こうした政策を見直して、移民の人たちが少しでも社会に溶け込めるような政策のあり方を考えなければなりません。
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