生命にかかわるドライマウスの危険

生命にかかわるドライマウスの危険

現代人は口が乾いている

口の中が乾いて食べ物が飲み込みづらい、しゃべりづらい、味がわかりにくい、口の中がネバネバする、といった症状を「ドライマウス」と言い、現代人に増えています。最も多い原因は、胃薬や花粉症の抗アレルギー薬、睡眠薬、抗不安薬、降圧薬など薬の副作用によるものです。ほかにはストレスや加齢、ファストフードなど柔らかい食事による噛む力の低下、糖尿病や更年期障がいなどの要因が重なって、ドライマウスになることがあります。

身体にとって重要な唾液

ドライマウスで問題なのは、口が乾くだけではなく、さまざまなトラブルを引き起こすことです。唾液には消化を進める働き以外に抗菌作用がありますが、口腔内が乾くと細菌の繁殖を防げず、虫歯や歯周病の原因になります。また唾液の粘りは、食べ物が粘膜を傷つけるのを保護し、食べ物をゲル状にまとめて飲みやすくします。しかし唾液の量が少ないとこれがうまくできません。またドライマウスになると風邪や肺炎をおこしやすく、胃潰瘍などにもかかりやすくなります。さらに、唾液に含まれるEGF(上皮成長因子)という物質は、上皮細胞を増殖し、組織を修復・再生させる働きを持っており、口や消化管の傷ついた粘膜の治癒を助けています。唾液は身体にとって重要な役割を担っているのです。

歯科でドライマウスを治療する

特に高齢者にとって、ドライマウスは生命の危険にもつながります。食べ物をうまく飲み込めず窒息したり、痰の細菌が肺に入り肺炎を起こしたりする危険があるのです。
ドライマウスを根本的に原因から治療する医師はいませんでした。しかし高齢化が進み口腔ケアが重要視される今、歯科医がその治療に挑んでいます。深刻な事態につながるドライマウスを防ぐため、口腔を潤すリンス剤の使用や、唾液腺や口腔粘膜のマッサージなどを行います。また患者さんが服用している薬をチェックして、副作用による口の渇きが減少するように種類や量をアドバイスします。口の中の健康を保つ歯科は、最先端の医療技術につながっているのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 歯学部 顎口腔機能治療学講座 教授 阪井 丘芳 先生

大阪大学 歯学部 顎口腔機能治療学講座 教授 阪井 丘芳 先生

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歯学、口腔外科学、顎口腔機能治療学

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メッセージ

歯科治療は虫歯や歯周病から、口腔がん、口唇裂・口蓋裂、摂食・嚥下障がい、睡眠時無呼吸症候群、ドライマウスなど、そのフィールドは広がっています。また研究では、歯や骨、唾液腺の再生医療など、さまざまな分野で発展してきています。歯学は今後の可能性を秘めた魅力的な学問です。「歯科医院の数はコンビニの数より多い」などと言われますが、新しい分野では人材が不足しているのが現状なのです。最先端の歯学に興味があるならぜひチャレンジして、未来の歯科医療と研究を担ってください。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。