力学の中で最も難しい、だから面白い「流体力学」とは

力学の中で最も難しい、だから面白い「流体力学」とは

流体は極めて複雑な現象

自動車や電車など車輪のある乗り物は、タイヤの円周と回転数から速度を計算できます。では、空を飛んでいる飛行機は、速度をどうやって測定しているのでしょうか。飛行機の速度は、ピトー管と呼ばれる、二つの管の圧力を測定する装置を使い、その圧力差を計算して割り出しています。この計算の原理となっているのが、「流体力学」です。
流体とは、固体以外の液体や気体のことで、空気や水のような極めて複雑な現象を扱います。ある「場所」が、ある「時間」にどのような運動状態にあるのかを解き明かすのです。

流体の運動を知ることで得られる貴重な情報

流体力学を使った情報は、さまざまな形で私たちの生活に生かされています。例えば、天気予報も流体の一つである「大気」の状態を分析することで、後の動き方を計算しているのです。流体の運動は、速度と圧力を変数とした方程式によって表すことができます。それで台風のニュースで報道されるのは、中心付近の最低気圧と最大風速なのです。圧力と速度がわかれば、その台風がどれぐらいの影響をあたえるのかを予測できます。
特定の場所にかかる流体の圧力と速度によって、その流体の動きを分析する流体力学を使えば、ほかにも地震が起こった時にどのような津波が襲ってくるのかを予測するときにも役立ちます。

船や飛行機の設計に流体力学は欠かせない

船や飛行機を設計するときには、水や空気の抵抗を可能な限り小さくすることが重要です。ここでも流体力学が使われます。例えば、船の形を決めるときには、船底を何百万もの部分に区分けして、各部分にかかる水の圧力をきめ細かく計算します。ただし、この計算では数百万もの連立方程式を解く必要があり、コンピュータがなければ計算不能です。流体力学の実用化には、コンピュータの性能の飛躍的な進化が大きく貢献しているのです。今では船を設計するときには、コンピュータ上で水の流れを精密に再現して形を決めているからです。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 教授 勝井 辰博 先生

神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 教授 勝井 辰博 先生

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流体力学

メッセージ

私は、船と海を対象に流体力学の研究をしています。私たちが毎日消費しているものは、海外から船で運ばれてきます。また日本近海には、豊富な海底資源が眠っていると言われています。日本の未来は、海を有効活用できるかどうかにかかっているのです。そのために必要なのが、高性能な船舶や深海まで潜っていける海底探査機です。流体力学は、こうした船や機器を開発するために欠かせない学問です。数学や力学が好きなあなた、ぜひ私と一緒に、神戸大学海事科学部で日本の未来をひらく研究を進めていきましょう。

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