機械工学が臓器移植に貢献する!?
「機械工学」と「医療」の関係は?
機械工学と医療というと、一見つながりがないように見えますが、実は、さまざまな場面で、機械工学の成果が役立てられています。例えば、機械工学の重要な一分野で、液体や気体の流れを考える「流体力学」は、私たちの体内で重要な働きをしている血液、食べ物の消化や呼吸など、流れを考えずに体を考えることはできません。体の流れを知り、活用することで、医療に貢献することができるのです。
臓器は、1つの「工業プラント」である
腎臓や肝臓は、なくては生きていけない重要な臓器ですが、その仕組みには、まだまだわかっていない部分がたくさんあります。腎臓には、1分間にペットボトル1本分の血液が流れ込み巧みな仕組みで1日にペットボトル1本分のおしっこを出し、体をきれいにしています。これらを工学的な視点から明らかにすることはさまざまな医療に役立ちます。
肝臓には、動脈から酸素いっぱいの血液が、静脈から栄養いっぱい、老廃物いっぱいの血液が流れてきます。さらに、消化に重要な胆汁をつくって、腸に流し込んでいます。たくさんの機能を持った肝臓は、1つの工業プラントのようなものです。その中を流れる血液は、水道や電気など社会インフラのようなものでもあり、血管は素材を運ぶパイプラインだと思ってもいいでしょう。こうした仕組みのなぞを解くカギの1つが、流体力学などの工学的知識なのです。
臓器をやさしくはぐくむゆりかごのような医療機器
臓器内の流れを解明し、臓器移植の際に、臓器を長持ちさせ、機能を復活させるための研究が進められています。欧米では、移植に使われる腎臓を、臓器灌(かん)流装置を使って保存することが広く利用されています。人体内と似た環境を整えることで、臓器を長持ちさせる仕組みです。臓器の仕組みなどを工学的に解明することで、より的確な処置をできるようになりつつあります。再生医療が本格化する将来に向けて、工学の知恵がいっぱいつまった未来の医療機器である臓器のゆりかごを研究開発しています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 准教授 小原 弘道 先生
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臓器工学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?