生物の営みを数式化し、海の恵みの持続的な利用をめざす
海洋国家・日本の海の広大な経済水域
日本は四方を海に囲まれた海洋国家です。国の経済水域も世界第6位で、その広大な面積と利用方法には多くの魅力と可能性があります。「海洋環境工学」では、海の環境を保全しながら生物や生態系から人類が得ている恵み、つまり「生態系サービス」を持続可能に利用していくための工学的手法を研究しています。それは、生物そのものを利用する方法だけでなく、事故や災害など環境に影響があることが起こった時、それによる生態系サービス低下の度合いやその低減方法を考えることも含まれています。
「有事」の環境への影響を評価する
例えば、内湾を航行するタンカーの重油流出事故が起こった場合などです。海上でオイルフェンスなどで油を囲い込み、オイルマットに吸着させるなどの対応を行いますが、回収しきれない油は沿岸の砂浜などに漂着して塊状になります。そして、そこからは毒性のある成分が流れ出てしまいます。まずその成分が沿岸でどのくらいの期間・濃度で溶出するかを計算で予測します。この結果と、そこに生息する生物同士の食べる・食べられるという捕食関係を数式で表した生態系モデルを使い、生物への影響をシミュレーションし、環境や生態系の回復にはどのくらい時間がかかるのか、どういう対策が効果的なのかを導き出していきます。これを「環境影響評価(環境アセスメント)」といいます。
生態系モデルを支える実験や調査
このような評価は基本的には計算で行うものですが、その基礎となる生物の営みを数式で表すには、生物の動態を実験や調査を通して把握する必要があります。その対象は、生じた出来事によって影響を受けると予測される食物連鎖中の生物で、例えば、沿岸生態系の重要な生物である貝類や海の森ともいえる藻場の海藻などです。こういった実験や調査は工学の分野だけでなく、関連する生物学の研究分野などとの連携で進めることで、大きな成果が得られています。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 海洋システム工学科 教授 中谷 直樹 先生
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海洋環境工学先生への質問
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