日本が世界に誇るエコシップの技術
世界中の造船業が追い求めるエコシップ
燃費のよい「エコシップ」の開発は、造船業の永遠のテーマと言えます。日本の技術は今、この分野で世界一のレベルにあります。
経済のグローバル化を支えるのは、情報通信だけではありません。実際にものを運ぶ海上輸送も大きな役割を担っています。企業が海外でものづくりをする理由は、船による輸送コストが極めて安いからです。また日本は島国のため、船がないと食料も燃料も輸入できません。輸出入貨物量の99.7%は船舶に頼っています。輸送コストには、船の燃費が直接影響します。少しでも輸送コストを抑えるために、日本ではエコシップ技術が発達したのです。
タンカーの船底の形は最高の企業秘密
ところでタンカーなど大型船舶の水面下の形は、その船を造ったメーカーの人間以外知りません。3次元的に設計された極めて複雑な船底の形は、各企業のトップシークレットになっています。
長さ300メートルの船腹に30万トンもの原油を積み、時速約30キロでタンカーは進みます。これほど巨大なタンカーともなると、わずかな燃費の違いが輸送費に大きな影響を与えます。そのため、水から受ける抵抗が極力小さくなるように、形が徹底的に検討されるのです。
エコシップ技術を支える流体力学
理想的な形を割り出すには、「流体力学」を使います。船底を細かく分割し、各部分が受ける水の圧力を精密に計算するのです。ただし、その計算は複雑な方程式を解かなければならないため、高性能なコンピュータが必要です。
日本のエコシップ技術は今も進化を続けています。最新型の船では、船底に空気を流して船体の水面下の部分を泡で覆い、摩擦を抑える工夫がされたものや、摩擦を抑える船体表面用の塗料なども開発されています。燃費をよくすることは、CO₂削減にもつながります。これらの技術の検証にも流体力学が用いられます。このような研究を重ねることで、世界有数の海運国家としての日本の未来を支えているのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 教授 勝井 辰博 先生
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