当たり前の論理から、アッと驚く結論を導き出す経済学
タバコは体に悪い、だからタバコ税を上げる
タバコは、健康を害する可能性が高いと言われます。確かにタバコを吸うと酸素を取り込む能力が低下し、長年吸い続けると肺がんや食道がん、舌がんになるリスクが高まります。また毛細血管が機能しなくなるため、歯肉が悪くなって歯がボロボロになるなどします。若い頃からずっとタバコを吸っている人は、平均寿命が5年ぐらい短くなると言われています。これほど健康に悪いタバコなのですから、その税金を上げれば吸う人も減るでしょう。
タバコ税を増税すれば「一石三鳥」?
タバコ税を上げれば、税収が増えます。日本政府は税収不足で困っているのだから、少しでも税収が増えるのはとてもよいことです。タバコを吸う人が減れば、健康を害する人も減るでしょう。元気な人が増えれば、医療費も抑えられるはずです。つまりタバコ税増税は「一石三鳥」の政策に思えます。でも、本当にそうでしょうか?
健康を害する人が減り、寿命が伸びると年金の支給額が膨らみ、政府の財政に悪影響を及ぼすでしょう。健康な人でも死ぬ直前には、何らかの形で医療費がかかります。ですから、タバコの害による医療費は減るけれども、ほかの医療費が増えるのです。ある経済学者がタバコ税増税の影響を計算したところ、トータルではプラスマイナス変わらずとなりました。
増税により犯罪が増えるリスクもある!
タバコ税増税には別の問題を引き起こす危険性もあります。偽造タバコです。増税によりタバコの値段が上がると、印紙を偽造してニセモノのタバコを作っても「割に合う」可能性が出てくるのです。実際に偽造タバコは、ヨーロッパでマフィアの資金源となり、社会問題化しています。偽造タバコが出まわれば、正規のタバコの売上が減り、税収は減るばかりです。しかも反社会的な勢力の資金が増えることになり、社会には悪影響をもたらします。経済学の考え方を使って、一歩先を考えると、こうした結果を見通すこともできるのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 経済学部 教授 芦谷 政浩 先生
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