ついに発見! 最後のパズルピース「ヒッグス粒子」

ついに発見! 最後のパズルピース「ヒッグス粒子」

世界中の研究者が追った「ヒッグス粒子」

物質をどんどん細かくし、これ以上分けられない最小単位を素粒子と呼びます。これまでに17種類の素粒子で「標準モデル」が作られました。素粒子は本来「質量がないので光と同じ速さで空間を移動できる」はずですが、光より動きが遅いのです。その理由として「空間を満たしている何かが邪魔しているからだ」と予測されました。その「何か」がヒッグス粒子です。素粒子物理学では「動きを遅くする作用」=「質量を与えること」だと考えます。万物に質量を与えるヒッグス粒子は、発見されればこれまでの理論の正しさを証明できる最後の「パズルピース」とも言える重要な素粒子だったのです。

どうやってヒッグス粒子を見つけるか

どこにでも偏りなく当たり前に存在するものを認識し取り出すことは非常に困難です。ヒッグス粒子を取り出し確認するには、巨大なエネルギーを与える必要がありました。そこで、スイスのCERNという研究所で、マイナス271度の超伝導の磁石を使用した全周27kmのドーナツ型の巨大な加速器が地下に建設され、その中で光に近いスピードまで加速した陽子同士を衝突させ、はじき出されるヒッグス粒子を検出する実験が延々と繰り返されました。衝突させた回数は3000兆回にも及びます。

巨大加速器がついにとらえた!

そしてついに2012年7月にヒッグス粒子の兆候がとらえられ、2013年3月にヒッグス粒子が確認されたと正式に発表されました。
数千人の研究者の中に、110人ほどの日本人が研究に参加しています。ヒッグス粒子検出プログラムの開発や、データ解析など、各国がリーダーの地位をめぐって競争となりましたが、3つのアプローチのうち2つで日本人のチームがリーダーの役割を担いました。また、加速器の強力な電磁石や精密な検知器など、実験装置の心臓部に日本の民間企業の技術が利用されています。日本の技術なくしてはこの加速器ができなかった、ひいてはヒッグス粒子の発見に至らなかったと言っても過言ではないのです。

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東京大学 理学部 物理学科 教授 浅井 祥仁 先生

東京大学 理学部 物理学科 教授 浅井 祥仁 先生

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素粒子物理学

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また、何に対しても「不思議に思う気持ち」を大切にしてください。私にとっては宇宙がどうやって誕生したのかを考えることが、最大の自分探しです。

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