流体のコンピュータ・シミュレーションの正しさを示すには?
ナビエ・ストークス方程式
身の回りにはさまざまな「流れ」に関する現象が起こっています。川や潮流、飛行機を浮かせる揚力、F1カーが走行する時に地面に押し付けられる力は、すべて流れによる現象です。これら流れの現象は、粒子の移動であるととらえられ、その移動は偏微分方程式であるナビエ・ストークス方程式で書き表せることがわかっています。
数学的に保証する
流れに関する自然現象についての理解や予測をしたい場合には、現象を表すモデルを作り、それに基づいてコンピュータによる数値シミュレーションを行います。モデルはいったんナビエ・ストークス方程式で書き表した後に、コンピュータで計算するために連立一次方程式に変換します。コンピュータは一次方程式でないと計算できないからです。この時の変換の仕方によって、違った連立一次方程式ができ上がり、シミュレーションの結果は変わってしまいます。そのために、選んだ変換方法が数学的に正しいという保証が必要になります。
ナビエ・ストークス方程式による解を「厳密解」、変換した一次方程式を使って得られた解を「数値解」とします。一定の間隔の時間や空間の数値を代入して計算するため、数値解は近似値で出されます。一般的に間隔が広ければ近似の精度は荒く、細かければ精度が良くなります。そこで、「もし間隔を極限まで細かくしたら数値解は厳密解に極限まで近づく」ということを証明したものを、シミュレーションの数学的な保証としています。
さまざまな事象の計算方法を考える
シミュレーションに対して数学的な保証をつけることで、このシミュレーションは信頼性が高く、高性能なスーパーコンピュータを使ってさらに研究を進める価値があるという判断ができます。実際の流れの様子は視覚で確かめにくいため、詳しい解析は数値シミュレーションに頼らざるを得ません。そのためには、さまざまな現象に合わせたモデルの構築が必要であり、それぞれをさらに精度良く解くための計算方法を生み出す研究が進められています。
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金沢大学 理工学域 数物科学類 教授 野津 裕史 先生
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