「固体」の常識をひっくり返した「準結晶」の発見
結晶とは原子の結び合い方で決まる
「結晶」というと、雪の結晶のような六角形の美しい形状や、水晶のような硬い鉱物が思い浮かびますが、結晶とは本来、固体を原子レベルで見たときの配列の仕方を指す言葉です。
例えば、塩化ナトリウム(原子記号=NaCl)は、Na(=ナトリウム)とCl(=塩素)という2種類の原子が結び合っているものです。このとき、原子の結びつき方(これを「構造」といいます)がどのようになっているかによって、結晶であるか、そうでないかがわかることになります。
一定の秩序をもつ原子の配列
結晶とは、「ある一つの単位格子(単位胞)が周期的な配列をしている構造」と表されています。同一パターンが繰り返されているということです。このパターンには法則があり、1回対称性(1回転[360度回転]すると元の形になる)、2回対称性(1/2回転[180度回転]すると元の形になる)、3回対称性(同、1/3回転[120度回転])、4回対称性(同、1/4回転[90度回転])、6回対称性(同、1/6回転[60度回転])という5つのみが存在しうることが理論的に明らかにされています。
結晶構造の固体が、一定の方向の面でスパッと切れることがあるのは、この構造と密接に関係しています。
「アモルファス」と「準結晶」
結晶構造のような秩序をもたない配列の仕方は、「アモルファス」(ガラス構造)と呼ばれています。長い間、固体の配列の仕方は、結晶とアモルファスという2種類で説明されてきました。
ところが、1984年、結晶でもアモルファスでもない構造が発見され、それまでの固体の“常識”がくつがえされました。この「準結晶」と呼ばれている固体には高い秩序性があるのですが、先に説明した結晶構造に許された5つ以外のパターンを有していました。それは5回対称性(1/5回転[72度回転]すると元の形になる)や10回対称性などですが、この発見によって、自然界にそうした構造が可能なことが証明されたのです。その構造の研究が、今、盛んに行われています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 枝川 圭一 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
材料工学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?