新たな「素粒子物理学」のはじまりの地平に立つ
「7月革命」で素粒子物理学が変わる
素粒子物理学の理論の中で存在が予言されながら唯一の未発見の素粒子だった、万物に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」が、2012年7月、発見されました。
ヒッグス粒子の発見は素粒子物理学の分野では「7月革命」と呼ばれることがあります。それは、今まで研究されてきた素粒子物理学のある意味「基盤」にあたる理論が証明され、これからは、その基盤の上で新しい理論を組み立てる段階に進んだパラダイムシフトが起こったことを意味しています。
宇宙誕生の謎を解く
「物質の最小構成単位は何なのか」という研究から、微細な世界の研究が進み、さまざまな素粒子が見つけ出されました。これは素粒子物理学の大きな成果でしたが、ヒッグス粒子が発見されて以降のテーマは、宇宙誕生とともに真空を埋め尽くしたヒッグス粒子が宇宙の誕生にどのような役割を果たしたのかというメカニズムや、相対性理論の時間や空間(「時空」)がどうして生まれたのかの謎を解き明かすこと、これまでの素粒子群とは異なる新たな枠組みの素粒子群の「超対称性」を検証することなどに変わっていきます。宇宙に存在する未知の暗黒物質(ダークマター)の解明につながることも期待されています。
日本に素粒子の新しい研究施設誘致を
次世代の国際研究施設として、電子と陽電子(電子とは反対のプラスの電荷を持った電子)を衝突させて、素粒子をさらに詳細に分析する「リニアコライダー」という施設の建設計画が進んでおり、建設地として世界各地と並んで東北の北上山地、九州の脊振山地が候補になっています。日本の優れた技術力と、研究者の分析能力の高さも最先端施設の日本誘致の強力な武器になると考えられます。誘致に成功すれば日本は素粒子物理学の世界の中心地となります。これから素粒子物理学を研究することは、「宇宙」の誕生や「時空」の謎という、まだ誰にも解き明かされていない壮大で新たな謎に満ちたフィールドに立つことになるのです。
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