持続可能な「バイオマス」発電への挑戦!

持続可能な「バイオマス」発電への挑戦!

「バイオマス」は注目の再生可能エネルギー

地球温暖化対策やエネルギー資源確保などの観点から、再生可能エネルギーに対する期待が高まっています。再生可能エネルギー固定価格買取制度が東日本大震災後の2012年にスタートし、太陽光、風力、バイオマス、地熱、(小)水力による発電が注目を浴びるようになりました。とりわけ、これまで利用されずに森林に放置されてきた間伐材など未利用木材を燃料とする「バイオマス」発電は、買取価格が高く設定されたこともあり発電施設の建設が加速しています。

課題は燃料となる木材の確保

木材を燃焼して水を沸騰させその水蒸気でタービンを回し発電する方式は、従来の石炭火力発電と共通する部分も多く、技術的にはおおむね確立されています。今後は燃料となる木材を効率的かつ持続的に集めるシステムをいかに確立するかが課題です。木を植えればいいという考えもありますが、木の成長には時間がかかります。また木を切り過ぎて山の栄養分が失われてしまえば、木を植えたとしても元に戻すことは困難になるため、バランスをとりながら山を管理することが重要です。

燃焼灰の再利用法を探る

木を燃やせば灰が出ます。木材の質量に対して1~8%ほどで、これは石炭に比べれば少なめですが、それでもバイオマス発電所が増えて大量の木材を燃やすことになれば、灰も相当量になります。現在は普通ゴミなどと同様に埋め立てられていますが、東日本大震災を経て再生可能エネルギーの推進とともに、純粋な木材の灰は肥料として利用してもよいという指針が示されました。灰は樹木が土壌から吸収した栄養分が元になっています。かつて、草木を燃やしてできたカリウムや石灰分を含んだ草木灰を畑にまいて肥料としていた時代もありましたが、考え方は同じです。バイオマス発電のために山から持ち出された栄養を元に戻すための研究が進められています。肥料効果の検証だけでなく、発電所から出る大量の灰を山まで運ぶコストの試算など実用化に向けた検証も急がれています。

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先生情報 / 大学情報

東北工業大学 工学部 環境応用化学科 准教授 佐野 哲也 先生

東北工業大学 工学部 環境応用化学科 准教授 佐野 哲也 先生

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環境学、エネルギー学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校でフィールドワークを体験することはあまりないと思いますが、道のない山に登って木を測定したり、穴を掘って土壌を採取したりと、「環境学」は体力を必要とする研究の多い分野です。ぜひ文武両道で高校生活を過ごしてください。研究の結果が出るまでに長い時間を要しますので、自然に興味があり、長期的な視野を持って物事に向き合える人が向いているかもしれません。また、環境・エネルギー問題の解決のためには自然科学のほかに、環境コストの試算など経済学の知識も必要です。文理を問わず幅広く興味を持って取り組んでください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東北工業大学に関心を持ったあなたは

本学では「未来のエスキースを描く。」をブランドスローガンに掲げ1964年の創設以来、3万人を超える卒業生を輩出し、日本の、とりわけ東北地域の産業・経済の発展に大きく貢献してきました。自然に囲まれた豊かな環境でありながら、仙台市街地にも近く利便性の良い 「八木山キャンパス」「長町キャンパス」の両キャンパスで創造的な思考を学ぶべく、最先端の環境を整え、学生の期待と意欲に応えるカリキュラムを用意しております。
進化し続ける学びのステージ。それが東北工業大学です。