ごみ焼却で発生する塩化水素ガスに耐えられる金属を探せ!
塩化水素ガスは金属を腐食させる
現在、プラスチックによる問題が深刻化しています。国連のSDGs(持続可能な開発目標)では海洋プラスチックゴミが取り上げられていますが、問題はそれだけではありません。ごみ焼却場の施設や熱利用発電設備に使用される金属が、設計時の想定耐用年数より早く腐食してしまう現象が起きています。原因を探ると、焼却時に出る塩化水素ガスが金属の腐食を速めていることがわかりました。塩化水素ガスはプラスチックを燃やす時に発生します。ごみ焼却炉の中では、捨てられたプラスチックから出た腐食性ガスが悪さをするのです。焼却場の寿命を延ばすためには、どういうメカニズムで塩化水素腐食が進行するのか、どんな材料にすれば腐食を食い止められるのかを研究する必要があります。
高温下でどうやって重さを測るか
研究では800~1000℃程度の高温空気に塩化水素ガスが1%程度含まれる中で金属がどんな反応を見せるのかを観察します。この時、腐食の状態を知るには金属の重さの変化を調べるのですが、800~1000℃の中で熱いまま金属の重さを測るには、どのような「はかり」を使えば良いでしょうか。装置自体が壊れては困ります。数マイクログラムの測定精度が必要です。金属試料を保持しているホルダーが変化しては困ります。しかも、周りは腐食性ガスが充満しています。……さて、あなたが測定するとすれば、どんな手をつかいますか。
腐食の様子を化学反応で理解する
金属は、腐食すると自身が酸素と結びつくため、時間が経過するにつれ重くなります。しかし、金属の種類により、また周りの環境により、様子はまったく異なります。時間に比例して重くなるもの、ある時間から急激に重くなるもの、途中で変化しなくなるもの、軽くなるものなど、さまざまです。質量変化のグラフの形は、腐食反応のメカニズムとまさに対応していて、精緻な測定と化学反応の検証から、腐食に耐えられる材料を開発していくのです。
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先生情報 / 大学情報
秋田大学 総合環境理工学部 応用化学生物学科 准教授 佐藤 芳幸 先生
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