幸福を手に入れるための「経済学」のアプローチ
経済学はお金持ちになるための学問ではない
「経済学」と聞くと、「お金もうけをする学問」だと思うかもしれませんが、経済学は「社会全体をハッピーにするための学問」です。社会がハッピーになるためには、どういう政策や制度が必要かを考えるのが経済学の目標です。2000年頃から「幸福の経済学」という考え方が出てきました。アンケートをとって、幸福感を数値で答えてもらい、性格や行動パターンも回答してもらいます。「幸せだ」と答えた人がどういう性格でどういう行動パターンをとっているかを調べれば、幸福になる方法がわかるかもしれないのです。
「幸せの経済学」から見えてくるもの
幸福感のアンケート調査からは、既存の経済学では当然と考えられていたことを覆す結果も出ています。例えば住宅は、中心部に住む人は利便性が高いが家賃も高い、郊外に住む人は利便性は低いが家賃も低いので、「家賃1円当たりの便益はどこに住む人も同じだ」というのが既存の経済学の考え方でした。しかし、調査によれば「家賃が安くても、通勤時間の長い人は幸福感が低い」ことが明らかになりました。この結果は住宅政策などに生かすことができるでしょう。
日本でも継続的に幸福感の調査を行う機関があります。主観的な幸福感は経済学の重要な指標と考えられるようになってきているのです。
経済理論の系譜を知り、経済を考える
生産と富の増大を考えた古典派経済学、資本主義社会を見直そうとしたマルクス経済学、経済社会をモデル化して精密に説明しようとした一般均衡理論など、たくさんの経済理論が生まれました。またGDPなどの集計量で経済活動をとらえようとするマクロ経済学、価格決定のメカニズムを考えるミクロ経済学と、経済学にはさまざまなアプローチが存在します。複雑な経済問題を解決するには、新旧や学派の違いを超えて、時代や環境に合った理論を選ぶ必要があります。現在や未来の分析であっても、歴史的な視点に立って、昔ある条件のもとで有効だった理論にも同時に目を配ることが重要になってくるのです。
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