地域に開かれたオープンな高齢者施設をめざして

地域に開かれたオープンな高齢者施設をめざして

施設を自宅に近づける

超高齢化が急速に進む今、高齢者が自宅により近い形で暮らすことのできる施設のあり方が模索されています。1990年代までは、特別養護老人ホームなどの高齢者施設は4人や6人の相部屋が普通でした。同じ部屋にいる入居者がお互いに話もでき、介護の効率もいいと考えられていたからです。しかし、さまざまな調査や研究の結果、ほかの入居者や介護スタッフが少人数で交流できる居室と個室を組み合わせたユニットケアの方が入居者の交流が生まれ、食事量の増加などの生活改善につながることがわかり、その後ユニットケアを導入する介護施設が増えました。

地域に開かれた場所づくりへの試み

最近では、高齢者と子どもや地域の人たちなどを結びつける、地域に開かれた場所づくりが注目されています。例えば、高齢者施設と保育園、障がい者施設を同じ敷地内に建てれば、多くの人が出入りし、子どもたちの遊ぶ声が聞こえてくるなど、オープンな場所になります。また、高齢者施設の道路側にゆとりをつくって誰もが来られるスペースにする、施設の一角に子ども向けの駄菓子屋さんをつくる、あるいはレストランを併設して入居者に時給を支払って働いてもらうなど、各地でさまざまな試みがなされています。
ほかの国を見ても、高齢者と地域の共存はなかなか進んでいないのが現状ですが、ヨーロッパでは認知症の高齢者が外出したり、自由に施設の庭やデッキに出て過ごすことができる所が多く、そういった施設の居住者は、表情も豊かなのです。

周囲の人々に見守ってもらうには

今後は、施設の壁を取り払って、街全体で高齢者を見守っていけるような形や、施設の一角につくるレストラン部分のデザインを建築家に依頼して人が集まるおしゃれな空間にするなど、建物と外との境界を少なくしていく方法を探すことが課題の一つです。自宅で暮らすのと近い形でさまざまな人とふれあい、周囲の人々に見守ってもらえるような環境を考えていくことが大切なのです。

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東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 講師 谷本 裕香子 先生

東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 講師 谷本 裕香子 先生

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建築学、デザイン学

先生が目指すSDGs

メッセージ

福祉はこれからどんどん変化し、若い人たちも参入してくる分野で、チャンスもやりがいもあります。私自身、計算してここまで来たのではなく、その時に面白そうだと思った方向に進んできたら、今にたどりついたという感じです。これだ、と思ったらとりあえず試しにやってみると、そのうちにやってきたことがつながってきます。
まずは今いいなと感じたことをやってみてください。好きなことには、力が湧いてくるはずです。

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本学では「未来のエスキースを描く。」をブランドスローガンに掲げ1964年の創設以来、3万人を超える卒業生を輩出し、日本の、とりわけ東北地域の産業・経済の発展に大きく貢献してきました。自然に囲まれた豊かな環境でありながら、仙台市街地にも近く利便性の良い 「八木山キャンパス」「長町キャンパス」の両キャンパスで創造的な思考を学ぶべく、最先端の環境を整え、学生の期待と意欲に応えるカリキュラムを用意しております。
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