スマホの料金プランはなぜ複雑なのか
どの料金プランを選ぶのか
スマホの料金プランを複雑だと感じる人は多いでしょう。使用するデータの容量や通信速度、契約年数などを組み合わせたプランがいくつもあり、「2年縛り」など一定の契約期間を超えると自動更新されるものもあります。スマホの通信事業者は消費者と契約し料金を払ってもらうことで利益を最大化し、消費者は自分に合うプランをできるだけ安く契約して満足度を高めるのが理想です。こうした料金プランを設計するとき、経済学の理論が役立ちます。
人は常に合理的な判断をするか
契約やその更新といった「意思決定」での当事者どうしの駆け引きを示す理論に、「ゲーム理論」があります。通信事業者にとってどんな料金プランや契約期間であれば、より多くの人が契約して会社の利益が最大化するかを予測できます。その一方で、ゲーム理論ですべてを予測することの難しさを唱える研究者も出てきました。ゲーム理論が、「人は常に合理的な判断をする」という前提だからです。実際、料金プランの詳細をよく理解しないまま契約したり、更新タイミングを忘れて自動更新が続いたりする人もいるでしょうし、「契約を変更するのが不安」と感じる人もいます。
ゲーム理論と行動経済学のハイブリッド
この消費者の心理に焦点を当てるのが「行動経済学」です。例えば、自分の使い方に合う内容よりも高スペックで高額なプランに価値を感じて契約することは、行動経済学では「自信過剰バイアス」と分析されます。行動経済学は一見、ゲーム理論とは水と油のようですが、消費者の合理的な行動が限定的なものだという「限定合理性」や、現状維持にこだわる「デフォルトバイアス」などの条件を、ゲーム理論と同様のアプローチで数学モデルに組み込むことで、理論をさらに強くする研究が進んでいます。理論が企業の商品設計の精度を高めたり、逆に消費者が搾取される商品設計にならないようなガイドライン整備に使われたりと、さまざまな用途や効果が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
熊本学園大学 経済学部 リーガルエコノミクス学科 准教授 熊谷 啓希 先生
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