データによる経済学的なエビデンスの提示が環境政策のカギ
環境政策のカギとなるエビデンス
近年、地球温暖化による異常気象の増加とともに健康被害や自然災害が増えています。こうした環境問題を解決し、持続可能な社会を実現するには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか?
具体的な解決策を導き出すには、実際に何が原因となって、どのようなことが起きたのかといった因果関係をまずは明らかにする必要があります。それには、経済理論をもって関係を検証し、統計データを駆使して得られたエビデンス(客観的な根拠)を提示することが肝要です。こうした、経済学的な視点からのエビデンスがあって初めて、効果的な課題解決に向けた政策の追求が可能となります。
現象を多角的にとらえ、可視化する
例えば、猛暑や寒波などによる死亡者数が増えている現象を考えてみましょう。単純に考えれば気温の異常な上下が原因といえますが、実はそれだけではありません。そこには、異常気象に対する私たちの回避行動メカニズムも関係しています。暑さ・寒さを避けるために、私たちがとる行動の一つが、エアコンの使用です。ただ、エアコンの使用頻度は電力価格に影響を受けます。特に東日本大震災後の4年間は、安価な電力を供給する原子力発電所の停止を受けて、電気代が高騰しました。そのため、人々がエアコンの使用を大幅に抑制した可能性が高く、それによって異常気温下における死亡率が上昇したことがデータ分析からわかりました。このように、問題を多角的にとらえ、データを用いて可視化することにより、根拠のある検証結果を政策へ反映させることができるのです。
エビデンスが課題解決への納得材料となる
環境に関する課題は、前例や、こうあるべきという主観や道徳論ではなかなか解決できません。経済学的な視点から得たエビデンスがないと、それに基づいた効果的な選択を行うことが困難です。裏を返せば、説得力をもったエビデンスは、人々の意識や行動を変えるきっかけとなり、納得材料にもなるのです。こうした手法は、環境問題に限らず、幅広い分野で活用されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
名古屋市立大学 経済学部 公共政策学科 准教授 内田 真輔 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
経済学、環境経済学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?