食品成分の不思議な力が健康を維持・増進する!

食品成分の不思議な力が健康を維持・増進する!

「肝臓にはシジミがいい」には根拠があった

「お酒をよく飲む人にはシジミの味噌汁がいい」と聞いたことはありませんか。昔からの言い伝えですが、研究によって科学的根拠が解明されています。シジミなどの貝類には、「亜鉛」という栄養素が含まれていて、細胞の増殖や酵素の活性化といった重要な働きを担っています。また、亜鉛は肝臓の働きとも深く関わっており、亜鉛が不足すると肝細胞が細胞死を起こして、肝硬変などの肝疾患を発症しやすくなります。昔の人は科学技術もない時代から、シジミを食べることによって亜鉛を補給し、肝臓の機能低下の予防・改善を実践していたのです。

若い女性に亜鉛不足が増加中

亜鉛が不足すると細胞の増殖が阻害され、成長障がいを起こしたり、味を感じる舌の味蕾(みらい)の働きが低下して味覚障がいを起こしたりします。特に成長期は亜鉛が重要なのですが、最近は若い女性に亜鉛不足の人が増加する傾向があります。これは、ダイエットのために、過度な食事制限や同じものだけを食べ続けるような偏った食生活が要因のひとつとされています。亜鉛の摂取量は15~17歳では男性1日13 mg、女性1日9 mgが推奨されており、亜鉛不足なら、牡蠣(カキ)をはじめ野菜、豆類、肉類などを積極的に食べるとよいでしょう。

食品のパワーを医療や日常生活にも活用

亜鉛には皮膚の再生を活性化する作用もあり、寝たきりの人の褥瘡(じょくそう)を改善するための塗り薬としても活用されています。一方、アルコール性の肝疾患に対しては、海藻の「カジメ」やなにわ伝統野菜「玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)」などの抽出成分にも予防効果があることがわかっています。
このように食品は、私たちの健康に関わる不思議なパワーを持っており、それぞれが複合的に作用することで、より効果を発揮すると考えられています。ですから、多様な食品をバランスよく摂取し、必要に応じて不足分を意識的に補うことが、健康の維持・増進につながると言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 生活科学部 食栄養学科 准教授 小島 明子 先生

大阪公立大学 生活科学部 食栄養学科 准教授 小島 明子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品栄養科学

メッセージ

食品成分による生活習慣病の予防効果とその作用メカニズムについて研究しています。食品中には、健康の維持に重要な役割を果たす不思議な成分が含まれています。これまでの研究では、食品成分には抗がん効果や抗肥満効果、アンチエイジング作用といったさまざまな効果を有することを見つけてきました。あなたもぜひ、私たちと一緒に、食と健康との関わりについて探究してみませんか。何気なく食べている日常の食事が、新たな驚きと発見でいっぱいになることと思います。一緒に研究できることを楽しみにしています。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。