日本古来の植物がなくなる、今そこにある危機!
「きれいだから」と花を植えて招いた失敗
1990年頃から、日本各地で毎年6月になると、黄色いキクのような花があちこちで咲き誇って目立つようになりました。これはオオキンケイギクと呼ばれる花で、その原産地は北アメリカです。その頃、大阪で花博(国際花と緑の博覧会)が開催され、全国で花を植える運動が広がっていました。このときに採用されたのが「ワイルドフラワー工法」という欧米産の野生の花の種をブレンドして散布する方法です。野生の花は生命力が強いため、その環境に合ったものが生き残ります。その結果、各地でオオキンケイギクが繁殖するようになり、元から生えていた日本の植物が消えてしまったのです。
人が持ち込んだ外来種が日本の在来種を滅ぼす
外来種が増えると、元からいた在来種が追いやられてしまいます。例えば琵琶湖では、放流された外来のブラックバスが、在来の魚を餌として繁殖しました。そのためニゴロブナやモロコなどが激減しています。
同じことがオオキンケイギクによっても引き起こされています。最終的にブラックバスが駆除の対象となったのと同じように、オオキンケイギクも特定外来生物に指定され、栽培は禁止されました。ところで、歴史をさかのぼれば、春の七草として私たちに身近なセリやハハコグサも外来種です。これらは3000年ぐらい前に稲や麦とともに日本に入ってきた植物です。あまりに昔のことなので、今では日本種として扱われていますが、これらを日本に持ち込み全国に広げたのは、やはり人間でした。
在来種を守ることの意味と目的
外来種が問題とされる理由はいくつかあります。一つは在来種と交雑して種の起源を遺伝子からたどることができなくなり、科学研究の妨げとなることです。あるいは琵琶湖のブラックバスによる被害のように、鮒ずしとなるニゴロブナなど、食材となる魚が捕れなくなり、経済的な損失が出ることがあります。これらの科学的な観点と経済的な観点に加え、今の環境を後の世代に残すことも合わせて、外来種の問題を考えていく必要があるのです。
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大阪公立大学 農学部 緑地環境科学科 教授 藤原 宣夫 先生
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