経営学で読み解く、日本の製造業の成功と停滞の背景
経営学とはどんな学問か?
経営学とは「会社が成功する法則を学ぶこと」だと勘違いしている人がいます。企業経営に成功の法則などありません。法則とは同じ条件のときに初めて通用する概念であって、企業経営で同じ条件になることはありえないからです。
しかし、ある企業が成功し、別の企業が成功しなかった理由を「説明」することはできるかもしれません。経営学とはそうした「説明」を論理的に探究し構築する学問と言っていいでしょう。
家電と自動車の違い
例えば、日本経済を牽引してきた製造業のうち、家電メーカーの苦境が伝えられています。国内の大工場を閉鎖し、大規模なリストラが行われています。一方、同じ製造業でも自動車やオートバイは苦しみながらも競争力は健在です。この違いはどこから生まれるのでしょうか? さまざまな理由がありますが、その一つとして製品の設計思想の違いをあげることができます。
テレビなどの家電の多くは、ある時期から、設計図に沿って部品を組み立てる「モジュール型」の設計と生産が主流になりました。一方、自動車やオートバイなどは設計と生産が一体となった「擦り合わせ型」のものづくりが維持されています。そうでなければ、よい製品ができないからです。極端な話、「モジュール型」の製品は、設計図さえあればどこでも生産できるので、労働力が安い国が有利です。そのため日本の家電メーカーは国際的な競争力が低下してしまったのです。
経済事象の背景にあるロジックを探る
もちろん、理由はこれだけではありません。販売戦略、企業体質などほかにもさまざまな要因が考えられます。経営学とは、これらすべてが研究対象であり、現在進行形で起こっている経済事象の背景にあるロジックを読み解く学問だと言えます。それはすぐに会社経営に結びつくものではありません。しかし、論理的に考察し、説明し、説得する力につながることは間違いないでしょう。経営学を学ぶ意味の一つはまさにここにあるのです。
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明治大学 商学部 教授 富野 貴弘 先生
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