土と太陽光がなくてもテクノロジーで野菜は育つ!?
高層ビルが農場に!?
「植物工場」という言葉を聞いたことがありますか? 密閉された室内で人工の光を使って野菜を育てる仕組みで、土や太陽光に依存しない最先端の農業技術として長年注目され続けてきました。しかし中には太陽光を利用するタイプもあります。
以前は光や熱の調整に電気代がかかるため、なかなか実用化できなかったのですが、照明・空調技術が発達したことにより、現在では自社の植物工場で野菜を作って商品を提供している外食企業もあります。大地で作物を育てる場合は、横にひろがる一面の土地しか使えませんが、例えば高層ビルを植物工場化すると、農地を縦の空間にも広げることができます。この特長から、海外では植物工場を「垂直農場(Vertical Farm)」と表現しています。
メリットがたくさん
植物工場の利点はほかにもあります。密閉された栽培環境なので、害虫や病原菌による作物被害もなく、完全無農薬で野菜を作ることができます。また、気候の影響も受けずに栽培できるので、定められた時期に定められた量を出荷できます。そして、消費地の都市部で野菜が作れるということは、輸送費が節約できるほか、輸送の際に排出されるCO₂の削減にもつながります。
ところで、これまでの農業は長年の経験を積んだ農家による職人的な技術によるものでしたが、植物工場の登場により専門的な農業知識がなくても農作業が可能になりました。パートやアルバイトなどで農業に触れる機会が増えて、若い世代が農業に関心を持つようになると、農業労働者の高齢化をストップできるかもしれないと期待されています。
植物工場の普及に向けて
どの野菜でも植物工場での生産が有効だというわけではありません。現在の植物工場は生産効率のよい葉菜類が中心で、果菜類や根菜類は、収穫までに手間暇がかかるため、現状では生産に向いていません。また、設備の初期・維持費用がかかることや、政府の支援体制や法整備が行き届いていないことなども今後の課題だと言えます。
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先生情報 / 大学情報
明治大学 農学部 農学科 教授 池田 敬 先生
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