格差は必要なのか、なくすべきなのか? ~経済成長と格差との関係~

格差は必要なのか、なくすべきなのか? ~経済成長と格差との関係~

「格差」の何が問題なのか?

「格差」が一概にすべて悪いわけではありません。経済やICT(情報通信技術)が発展すると、FacebookやGoogleのようにイノベーションを起こして多くの富を集める企業が現れます。成功した人間がより多くお金を稼ぐこと自体は資本主義の発展に必要でしょう。しかし、不況やAI(人工知能)の発展で仕事を失う人間が多くなると、社会不安などの悪影響が発生します。
ごくわずかな人間が地球上の資産を独占し、資産を持たない人間が大量に存在するという現在の状況は好ましくありません。税金などで富裕層の資産を上手に分配し、極端な格差の発生を抑えて社会全体の経済成長を実現する方法が求められています。

日本国民は政府を信用していない?

スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国は税金が重い半面、社会保障を充実させる「高負担高福祉」の政策で知られています。それに対して日本は「低負担低福祉」の国家と言えます。北欧の国々のモデルをうまく日本に取り入れて、高負担高福祉の国家にかじを切ることも考えられますが、そこには前提となる問題があります。ある調査によると、ノルウェーでは半数以上の国民が政府を信用すると答えているのに対して、日本では政府を信用できないと答える国民がかなり多いのです。

求められる、お金だけではない幸せの尺度

日本は北欧に比べて人口が多く、アジアにはEU(欧州連合)のような連合体がないため、単純に比較はできませんが、年金や税金の仕組みや運用状況をわかりやすく公開する制度を整えれば、政府への信用度は上がるでしょう。また、日本は諸外国よりも所得や資産の格差が相対的に小さい半面、正規と非正規の労働者間格差が問題化しています。経済学ではGDP(国内総生産)を増やすだけでなく、国民の幸せや福祉も重視する考えに変わりつつあります。非正規の労働者への福祉やサポートを手厚くして、誰もが老後の生活を保障されるような、多様性を重んじる社会へのシフトが必要です。

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明治大学 政治経済学部 経済学科 教授 平口 良司 先生

明治大学 政治経済学部 経済学科 教授 平口 良司 先生

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経済学

メッセージ

「経済学」とは社会を科学する学問です。数値データを分析し、外国語の文献を読むことが多いので、数学と、英語を含む外国語を学んでおくことが大切です。社会に対する好奇心も必要です。
なぜ人口が減っているのか、なぜ高齢化が進んでいるのか、なぜ景気がいいと言われても実感がないのか、日常生活の中でも、例えばコンビニに行ったときに、なぜたくさんの商品があって24時間営業をしているのか、といった視点で考えてみてください。日常を当たり前だと思わずに、「なぜ」という気持ちを持つことが大切です。

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