「公」とは何だろう
「公」のイメージ
あなたは「公(こう/おおやけ)」と言うと、何をイメージしますか? 「私(し/わたくし)」の対極にあるもの、例えば国家や公務員、役所や公共施設、市区町村が管理する公園、学校などが浮かぶかもしれません。「公」とは、国家が担うもので、「私」からはちょっと遠いイメージがあるようです。しかしこれは、いつの時代も変わらない価値観なのでしょうか。
「公」と「私」の関係
「republic(共和国)」という言葉のもとになったラテン語の「res publica」は、「公共の事柄」と訳され、「たくさんの人々に開かれているもの、みんなのもの」という意味があります。つまり国家は国民のためのものというわけです。
17世紀のイギリス革命やフランス革命以前、個人は、地域の中の一人、家族の一員、ある階級に属する民など、集団の構成員としての立場でとらえられ、「私」「個人」と「公」が対極にあるとはそれほど意識されていませんでした。それが国民主権と議会政治が整備された近代国家の誕生によって、「公」と「私」が切り離された存在になったのです。公的な秩序を担うのは国家で、そこに暮らす人々は経済的な領域で私的な利益を追求するようになりました。その経済的な領域で争いが起きないように法律をつくるのが、国家が行う政治の役割になったのです。
現代社会の問題を解決するために
しかし多様化・複雑化した現代では、政治だけでは解決できない問題が生じています。例えばルールが決まっていても、年金保障制度はうまくいっているとは言えません。環境問題では、国を超えたグローバルな視点で公共性を考えなければならないでしょう。「公」イコール「国家」という図式ではとらえきれない問題が、現代社会にはたくさんあるのです。これまで国が担ってきた公的なことと、私的なことの境目も揺らいでいます。「公」と「私」を切り離しては、もはや解決できないのです。今こそ「公とは何か」を問い直す時期に来ているのです。
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