どうすれば経営者はリスクのあるビジネスに挑みたくなるのか?
会社の役割とは?
会社の基本的な役割は、多くの人から株式などの方法でお金を集めて、その資金を使って経営者がリスクがある事業を行い、結果として得られた収益を投資家に還元することです。ただし投資家と経営者の利害は一致しない場合があり、経営者は怠慢に経営をしたり、資金を私的に流用したりするなどの問題が生じます。そのため、会社法は投資家と経営者の利害の調和・一致を試みています。
経営者はリスクを避けたがる
投資家と経営者の利害が食い違う原因の一つが、リスクへの態度の違いです。投資家の多くは複数の企業に投資をしてリスクを分散しており、たとえ一つの会社の事業が失敗しても挽回は可能です。会社が成長すればリターンも増えるため、投資家は事業への挑戦を歓迎する傾向があります。一方で経営者は事業が失敗した場合、クビになったり、会社から損害賠償を求められたりするかもしれません。このように経営者はリスクを避けて安定した経営をめざす動機があります。
挑戦を促す経営者報酬
経営者(役員)に、「リスクに挑めば、投資家だけでなく自分にも利益がある」と思わせることができれば、会社の成長、ひいては社会の発展につながります。そのための仕掛けの一つが役員報酬、特に株式の価値と連動した報酬です。しかし、役員が勝手に報酬を決めると、役員自身の利益のみを追求し、投資家の利益と一致しないおそれがあります。わが国の会社法では、投資家の意思が反映される株主総会決議で役員報酬を決定するよう定めていますが、株主総会が関与できる範囲は役員全員分の報酬額などに限られています。役員は株主総会で定められた上限内で自由に報酬決定ができるため、特定の者にのみ過大な報酬が与えられたり、企業の業績が悪くとも報酬を高額なものとしたり、株主の意向と一致しない報酬の与え方をするおそれがあります。そこで、投資家と経営者の利害の一致を図り、経営者に適切な動機づけをする役員報酬となるよう、諸外国の制度も参考にしながら、役員報酬に関する法制度の研究が進められています。
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