インターネットはリアルな世界と違うのだろうか
環境と行動から人間を探る
人間は、社会的・物理的な環境(状況)と自身が影響しあうことで、行動や意思、態度を変えるものです。このように、環境と行動との関係から人の心を理解しようとする学問が「社会心理学」です。社会心理学の分野では、人間同士のつながりやコミュニケーションなど身近なことがらをデータに基づいて分析し、その傾向や問題点を探る研究が行われています。
直接顔を合わせなくてもつながれる
高校時代は思春期(青年期前期)にあたります。これはちょうど「社会化」といって、家族という小集団から抜け出し、社会でどのように適応していくのかを模索し始める時期でもあります。社会の中で仲間とよい関係を築くには、ルールを守ることや他者を思いやるなどのスキルが必要です。一人の人間として自立するために、多くの人が悩みながらこれらのスキルを手に入れ、成長することが社会化なのです。
社会化の重要なポイントは、理解しあえる相手をどう見つけるかです。インターネットの普及にともない、社会化のための環境は変化しています。インターネットがない時代は、主に直接顔を合わせる人との相互作用で社会化がもたらされました。しかし今は、世界のどこにいる人とでも、SNSなどでつながることができます。直接顔を合わせないつながりも、社会化の助けになることがあるのです。
インターネットは別世界ではない
インターネットのコミュニケーションは、掲示板の炎上など、特別な問題があるように見られることがありますが、決してそんなことはありません。人間は匿名で集団になると「没個性化」が起こり、例えばひいきのスポーツチームが優勝すると路上で大騒ぎするなど、普段はできないような反社会的な行動を、集団だからとやってしまうことがあるのです。集団の範囲が広く、行動の履歴が残るインターネットは、人間にもともと備わっている性質の特徴が見えやすいだけとも言えます。社会心理学でインターネットを扱うときには、このようなことを理解したうえで、その役割を考えることが重要なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。