「同期」作用で、群れ全体の制御
セグウェイの原理は「倒立振子」
手のひらに、ほうきや傘を立ててバランスをとる遊びをしたことがある人も多いでしょう。倒さないためには、それらが傾く方向に手を動かしますが、これと同じ仕組みの実験器具に、「倒立振子」があります。逆立ちさせた振子の支点を乗せた台車を、モーターを使って左右に移動させることで、倒立状態を維持させるというもので、制御工学を学ぶ際によく用いられます。
ちなみに、この倒立振子の原理を使っているのが、電動の立ち乗り二輪車「セグウェイ」です。セグウェイは、身体を傾けると、傾けた方向に動きますが、これは、倒立振子の「まっすぐ立たせる」という機能を応用したものです。
「同期」作用で群れ全体を制御
では、複数の倒立振子を倒立させるには、どうすればいいでしょうか? それぞれの倒立振子を制御する方法もありますが、1つ目の振子の運動にほかの振子の運動を同期させるという方法もあります。「同期」というのは、多数集まった同一のものが、互いに影響を及ぼし合うことで同じ動きをする現象を言います。バラバラにリズムを刻んでいた複数のメトロノームが次第に同じリズムを刻むようになるのは、代表的な同期現象です。倒立振子では、まず1つ目を倒立させ、それに2つ目以降を同期させることで、すべての倒立振子を倒立させることができます。このような同期による制御原理は、手術支援ロボットでも用いられています。
個体相互の関係で全体を最適化
全体の動きを制御する場合、構成する個々の要素の動きを制御して全体を制御する方法がありますが、上記の例のように、ほかとの相互関係をもとに群れ全体を制御する方法もあります。こうした例は、自然の中にも存在します。
例えば、V字になって飛んでいる渡り鳥の群れは、ほかの鳥との相互関係をもとに、群れ全体のエネルギー効率が最大になるようなフォーメーションを形成し、さらに羽ばたきも位置に応じて同期させて飛んでいることがわかってきました。このような自然原理を人工物の群制御に応用する試みを行っています。
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