360年間も解けなかった数学の問題が解けた!
未解決問題が数多く残る整数論の世界
整数論は、「整数」の持つ性質について研究する数学の一分野です。非常に古くから存在する研究分野ですが、現代においても未解決の問題がたくさん残されているため、大勢の数学者たちがそれらに挑み続けている、活発で魅力的な分野でもあります。
ついに証明された「フェルマー予想」
整数論の世界で長い間証明できないでいた未解決問題の中でも、もっとも有名なのが「フェルマー予想」です。これは、17世紀のフランスの数学者、ピエール・ド・フェルマーが残した予想で、「3以上の自然数nに対して、『Xのn乗+Yのn乗=Zのn乗』となる自然数X、Y、Zは存在しない」というものでした。簡潔な予想に見えますが、このフェルマー予想を証明したり、反例の有無を確認したりすることは困難を極め、その後360年もの間、誰も解決することができなかったのです。
ところが1994年、イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズが、ついにフェルマー予想の完全な証明に成功したのです。ワイルズは整数論だけでなく、幾何学や物理学の分野にも通じるさまざまなアプローチを総動員することによって、この難問を見事に解決しました。その証明のプロセスは非常に難解で、本当の意味でそれらを理解していた人は、その当時、世界でもごくわずかだと言われていました。
整数の謎が持つ美しさとロマン
フェルマー予想以外にも、整数論の分野には、何百年も前から未解決のままの問題が数多く残されています。例えば、素数の分布については未だにわからない部分が多く、それを逆手に取って暗号理論に用いられているほどです。整数の謎が持つ美しさとロマン、そしてそれを解くことができた時の喜びは、ほかの研究分野では味わえないものです。私たちの純粋な知的好奇心を刺激してくれる整数論の世界は、時代の流れにとらわれない貴重な知的文化でもあるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。