地上最強、史上最速!? 究極のナノ材料グラフェンの可能性と課題
炭素が秘める大きな可能性
鉛筆の芯からダイヤモンドまで、炭素原子だけでできている物質はたくさんありますが、その中にグラフェンがあります。グラフェンは、元素同士を結び付ける「手」が3本しかない2次元構造をしており、その薄さは原子1個分という究極のナノ材料です。炭素原子同士の結び付きがどの物質よりも強いことから「地上最強」とも呼ばれています。また、グラフェンの上と下には電気を通すπ(パイ)電子が薄く広がっており、とてつもない速さで電気を通すことから「史上最速」の電子材料としても知られています。
テラヘルツの未来が見える
グラフェンの並外れた性質を発見したマンチェスター大学の研究者アンドレ・ガイム氏は2010年にノーベル賞を受賞し、原子1個分という薄さや、六角形という対称性が高い構造を持つことで、さまざまな分野に応用できる素材として大きな注目を集めました。電子材料としてみると、現在半導体に使われているシリコンよりも100倍近いスピードで電気を通すことができるため、CPUの動作速度を飛躍的に高めることができます。現在、性能の良いCPUの処理速度は4~5GHz(ギガヘルツ)程度ですが、これが100倍になり、その先には1THz(テラヘルツ)の世界も見えてくるのです。
量産化が課題
世界各地で量産化の試みがなされましたが、グラフェンの採取の仕方が課題となりました。主に進められているのは、炭素の塊であるグラファイトに粘着テープを張り付けて剥がす、という工程を繰り返して、最終的に残ったグラフェンを採取する方法です。しかし、この方法では量産化が難しいため、シリコンカーバイド(SiC)を使う採取法が開発されました。シリコンとカーボンが結び付いた物質を1600度まで加熱するとシリコンだけがなくなり、残ったカーボン原子が結び付いてグラフェンを作るという方法です。この方法で作られたものは、電子が走るスピードに課題は残るものの、産業に応用できる大きな可能性を持っています。
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徳島大学 理工学部 理工学科 電気電子システムコース 教授 永瀬 雅夫 先生
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