省エネや低炭素社会に不可欠な「パワーエレクトロニクス」
ACアダプタを使わずにスマホを充電したら?
日本の年間総発電電力量は、約10000億kWhにのぼります。生活の快適性が高まるにつれその量は増えるばかりで、電気を効率的に使う技術、二酸化炭素の排出量を低減する技術が求められています。
発電所から家庭に送られる電力は一般的に電圧100Vの交流で、周波数は関東が50Hz、関西が60Hzです。例えばスマートフォンを充電するときに、ACアダプタを使わないとどうなるでしょう? スマートフォンのバッテリー電圧は3.7V前後ですから、発電所から送られる100Vのままでは電圧が高すぎて、スマートフォンが爆発して壊れてしまうでしょう。
電力を自在に操るために
しかもスマートフォンや家電製品の多くは直流を使用します。つまり発電所から送られてくる電力は、交流を直流に変換するだけでなく、電圧や電流もその機器に合ったものに変換しなければ使うことができないのです。ACアダプタはそのような変換を行う装置の一つです。
電力を変換する技術に関する学問を「パワーエレクトロニクス」と言い、省エネや装置の高効率化、低炭素化に大きく貢献しています。代表的な電力変換器である「インバータ」は、半導体のスイッチで1秒間に2万回もオンオフの切り換えができ、電力を交流から直流、さらに直流から交流に変換することで周波数や電圧、電流を自在に操って、モーターを効率よく駆動させます。このような技術は太陽光発電や風力発電でも生かされています。
身近な製品に欠かせないインバータ
インバータは、今やあらゆる家電、情報機器、自動車、鉄道などに使われていて、私たちの生活に欠かせない電力変換器になっています。例えば、蛍光灯が白熱灯のように熱くならず部屋を照らしてくれるのも、強力な吸引力をもつ掃除機が生まれたのも、自動車が滑らかに発進・停止できるのも、インバータで無駄な電力消費を防ぎ、きめ細かく機器を制御しているからなのです。増え続ける電力消費問題を解決する意味でも、この分野への期待はますます高まるばかりです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 工学部 電気電子工学科 教授 野口 敏彦 先生
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