社会を支える縁の下の力持ち「組込みシステム」
「組込みシステム (Embedded System)」とは
コンピュータは、パソコンやスマートフォンだけでなく、自動車や家電製品、工業機械など、さまざまなところに搭載されています。パソコンは通常数万円で売られていますが、自動車や家電製品に組み込まれたコンピュータは100円や10円、なかには数円のものもあり、コストの低さも特徴の一つです。このように、さまざまな機器や設備に組み込まれるコンピュータを組込みシステムや組込みコンピュータといいます。
農業の自動化にも
近年ではこの組込みシステムを農業に役立てる研究も行われています。その一つが自分で考え制御し、動く自律型の水耕栽培ビニールハウスです。屋根に設置したソーラーパネルで発電した電気をバッテリーに蓄え、ハウス内の温度や湿度に応じてポンプの働きを調整し、水を循環させることで水耕栽培を自動化します。これらの制御はすべて組込みシステムを用います。このシステムには大がかりな設備が不要で、電力も太陽光発電を利用するので、導入・運用コストを抑えることができます。少子高齢化によって働き手不足に悩む日本の農業に大きく貢献することが期待されています。
工場の設備保全にも
また、いたるところに飛び交っている無線LANの電波を利用して、工場設備の故障を自動検知するという研究も行われています。無線電波は目に見ることができませんが、この通信路情報として行列で表すことができます。故障などによって機器動作に異常振動などが発生すると、無線LAN電波の通信路情報の行列も変化するため、ここから故障の可能性を自動で検知できるという仕組みです。この仕組みも既存の設備に無線LANユニットを追加するだけで可能になります。そのためコストがかからず、大規模な設備投資が難しい中小企業にも導入しやすいというメリットがあります。縁の下の力持ちとして、さまざまな領域に役立てられる組込みシステムには、今後もさらなる可能性が広がっているといえるでしょう。
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近畿大学 産業理工学部 電気電子工学科 准教授 松崎 隆哲 先生
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