AIを「だまして」情報を送る通信システム
可視光無線通信とは
通信とは、送信側が送りたい情報を受信側に正しく受け取らせるためのシステムです。通信システムでは、より正確に、より多くの情報をより速く送ることが求められており、そのための研究が進められています。可視光無線通信は、目に見える光を使って無線通信を行うもので、最近とても注目されています。
敵対的画像を通信に使う
新しい可視光無線通信において、情報を伝送する方法として提案しているものが、AIの画像認識機能をだます技術を利用するものです。AIは画像を読み込むと、学習データをもとに画像に映っている内容を判別します。しかし、画像に意図した微妙な変化を加えると、AIをだまして間違った判別に導くことが可能です。これを「敵対的画像」と言います。もとの画像と敵対的画像を比べても、人間の目にはほとんど差がわかりません。この技術を利用して、受け取らせたい情報に誤認識させる敵対的画像を作れば、画像をスマートフォンなどで読み込んだときに、人間の目で認識したものとは違う情報を送れるのです。このシステムは静止画の画像だけでなく、動画にも応用でき、敵対的画像の内容を次々と変化させることで、多くの情報を送り続けることができます。
実用化に向けて
このシステムは電波法などの制限なく通信できるうえに、秘匿性が高いというメリットがあります。これまでの研究で、システムが原理的に動くことまでは確認できています。実用化には、伝送速度の向上や、パソコンやスマートフォンなどの機器によって異なる画像表示への対応などの、いくつかの課題を解決する必要があります。
実用化されれば、商業施設や公共空間などのディスプレイに映像を表示させるデジタルサイネージやゲームなどで、さまざまに活用されることが期待されます。しかしこのような研究は、使い方を限定せず、純粋に仕組みの開発を進めているため、意外な使われ方をすることや、思いもよらぬ発展につながることもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 工学部 電気電子工学科 教授 和田 忠浩 先生
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