方向音痴は感覚的なものではなく、情報整理力の差
方向音痴=ナビゲーション能力の欠如
ひと口に「方向音痴」と言いますが、この言葉は東西南北の感覚ではなく、迷わずに目的地へ着くことのできるナビゲーション能力を指すことが一般的です。この視点からみると、①向きを変えても方向や空間関係を維持する力、②目印を記憶したり区別する力、の二つの要素から成り立っていると考えられます。男女差で言うと、女性は①の能力が生得的に劣っていますが、②の方は男性と大きな差はありません。また、①も②も、その背後には記憶力が影響していると考えられますが、子どもや老人が迷子になりやすいのは、記憶力が未熟だったり、加齢とともに低下するからだと考えられます。
目印が何もなさそうな場所でも迷わない理由
「目印」のあるなしは、環境の特性ではなく、そこで生活する人の弁別能力によります。例えば、雪原に住むイヌイットは、普通の人では見分けられないような雪の積もり方の違いを識別し、目印にしています。またミクロネシアのカヌーイストははるか彼方にある島をめざすとき、波の向きや鳥の種類により、島までの距離を把握しているのです。一方、動物の場合は、犬は鋭い嗅覚、鳥は磁気や星座から目的地を判断していると考えられています。「目印がない」場所でも、意識と経験により目印の多い環境になりえるのです。
すべての人は方向音痴?
東西南北の感覚は、ある程度は身につけることができます。例えば、神戸や京都は、周辺の山の尾根がほぼ南北軸に一致しているため、居住者は自分の住む街の中であれば、比較的正しく東西南北を認識できます。しかし静岡の場合、東海道線や国道1号線が東西に走っているように感じていますが、実際は正確に東西ではなく、30度ほど東が北にずれています。その分、居住者の考える静岡の街は30度ほど東が南にずれたものになります。もし、人間が真っ白な何もない空間に立たされたら、東西南北を正しく把握できません。ただ、動物の中には地磁気を感じることができるものもいます。
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静岡大学 教育学部 教育心理学専修 教授 村越 真 先生
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