モータードライブで進化する自動車
意外と古い電気自動車の歴史
排気ガスを出さないクリーンな自動車として、電気自動車が注目されています。その歴史は意外に古く、1900年(日本では明治33年)のパリ万博には既に出展されていました。モーターで動く電気自動車の長所は、環境に優しいことだけではありません。アイドリングがいらず、トランスミッションという変速装置なしで走行条件にあわせて最適なエンジン出力を維持できるなど、省エネに大きく貢献できるため、運輸部門のエネルギー問題対策の一つとして期待されています。
高性能バッテリーの開発がカギ
既に、市販されている電気自動車ですが、なかなか普及しないのが現状です。その理由の一つは、航続距離がガソリン車に比べてまだ短いからです。それはバッテリーに蓄えられる電気の量に限界があるからで、例えば50リットルのガソリンのエネルギーをすべて電気自動車のバッテリーに置き換えると、1000個以上必要になるほど大きな開きがあります。そこで現在、より小型で大きなパワーが出るバッテリーが研究されています。
電気自動車の開発でもう一つ重要な役割を果たしているのが、「パワーエレクトロニクス」と呼ばれる分野です。電力を交流・直流に変換したり周波数を変えたりして、効率よく使うことを考える学問で、電力工学や半導体工学、制御工学とも密接に関わっており、自動車以外にも家電製品や鉄道など多くの分野でその技術が生かされています。
雪道でもスリップしない自動車
例えば、インバータと呼ばれる電力変換器を使い、モーターでタイヤの動きを細かく制御すれば、たとえ雪道でもスリップせず快適に走行することが可能です。また超高速モーターを過給機に応用することで、エンジンのダウンサイジングも実現することができるでしょう。電気自動車やハイブリッドカー(ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせて走らせる車)は、パワーエレクトロニクスの研究によって、より省エネで高性能に進歩し続けているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
静岡大学 工学部 電気電子工学科 教授 野口 敏彦 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
パワーエレクトロニクス、電気機器学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?