アルツハイマー病の治療と予防の研究最前線
アルツハイマー病の原因は脳細胞の不要物質
認知症患者の半分近くを占めるアルツハイマー病は、脳細胞にたまったアミロイドというタンパク質が原因だということがわかっています。細胞内では、必要のない物質が間違って作られたり、過剰に作られたりすることがありますが、通常は不要な物質は細胞内で分解されます。しかし、何らかの原因で不要なタンパク質がたまると、その細胞は弱って死んでしまい、そういった細胞が一定の量を超えると病気が発症するのです。現在、アルツハイマー病の治療の研究には、細胞内の不要なタンパク質を除去したり減らしたりすることをめざすものと、症状が進む前に早期診断し、早期治療をめざすものがあります。
脳に直接薬を効かせるには?
これまでの研究で、普段から食べられている糖質の一種に、細胞にたまった異常なタンパク質の分解を活性化する働きがあることがわかりました。これは、細胞レベルでは実証できたのですが、動物実験の段階で、物質が脳に入っていかないという壁にぶつかっています。脳に直接薬を届けるというのは、現在のところ難しく、経口投与や注射などはできません。ですから、脳に吸収されやすい別の物質を見つけるか、何らかの方法で薬を効果的に脳に運ぶシステムを考え出すことが大きな課題となっています。
脳の病気は早期診断が大切
一方で、細胞にたまった不要なタンパク質と結合して光ることで弱った細胞を可視化する物質の開発や、血液や唾液、尿など簡単に採取できる生体サンプルで病気の進行度合いを分析するシステムなど、症状が出る前にアルツハイマー病を早期診断する方法も研究されています。脳の場合、症状がある程度進んでしまうと、治療しても効果が出ないので、できるだけ早期の診断が求められているのです。
また、最近では糖尿病がアルツハイマー病と大きく関係していることが明らかになり、食事や運動などさまざまな生活習慣とどう関係しているかの統計調査も盛んに行われています。
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弘前大学 医学部 医学科 教授 若林 孝一 先生
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