感情や記憶を動かす薬と食品
感情や思考を司る“脳”の働き
私たちの脳は、感情や思考・記憶などを司る複雑な臓器です。脳は神経細胞とグリア細胞から成り立っています。神経細胞は電気的な信号と神経伝達物質と呼ばれる分子によって情報をやり取りしています。神経伝達物質は、私たちの精神活動を左右する重要な役割を担っています。例えば、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質は、不安や抑うつなどの感情に関わっています。また、アセチルコリンは脳の海馬と呼ばれる部位において記憶に関与することが分かっています。
うつ病に作用する薬や食品「ラクトフェリン」
うつ病とは、気分の落ち込みがずっと続いたり、何に対しても意欲や楽しさを感じることが出来なくなってしまう病気です。原因については、まだはっきりとは分かっていませんが、ノルアドレナリンやセロトニンなどが関与すると考えられています。現在、使用されているうつ病の治療薬は、これら物質の脳内の量を増やす働きを持っています。また、ラクトフェリンは、初乳に多く含まれ、主に免疫機能に関与することが分かっていますが、近年、脳へも作用することが明らかになってきました。マウスや細胞を用いた実験により、ラクトフェリンが抑うつ症状を改善する可能性について研究が進んでいます。
認知症に作用する薬や食品「パクチー」
認知症とは、もともと正常に発達していた記憶や思考力などが何らかの原因により低下してしまう病気です。認知症の約半数が、アルツハイマー型認知症で海馬の神経細胞が死んでしまうことによって起こると考えられています。現在、日本ではアルツハイマー型認知症の薬は4種類しかありません。その主な働きは、アセチルコリンを分解する酵素の働きを抑え、進行を遅らせます。また、多くの研究者が、認知症の予防に効果を示す食品を調べています。美容に良いと注目されているパクチーには、抗酸化作用があることが分かっています。認知症の原因の1つに、脳の酸化ストレスが関与していると考えられており、パクチーの認知症への効果について期待されています。
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先生情報 / 大学情報
横浜薬科大学 薬学部 臨床薬学科 教授 出雲 信夫 先生
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