ITやデータサイエンスの力で、よりよい医療を!
データから最適な医療のありかたを探る
「医療情報学」はITやデータサイエンスを使って、医療の問題の解決や、よりよい医療システムの開発を行う研究分野です。その一つである「データヘルス」は、患者が受けた治療の内容が書かれた「レセプト(診療報酬明細書)」や健診のデータを分析して、病気の予防や医療環境の整備に生かしています。
例えば北海道全域の数百万人のレセプトデータから、脳梗塞患者の発症の分布を分析し、地理情報システムGISと組み合わせて「どこに病院があればいいか」考える研究が行われています。北海道は専門医のいる病院まで数時間かかるような地域も多く、必要なときに必要な医療が受けられるように、最適な病院・専門医の配置を明らかにすることが求められているからです。
将来の問題を予測し、対策を考える
同じく北海道のデータを使って糖尿病予備軍の人を抽出し、その人たちの未来を予測する研究もあります。糖尿病は悪化すると人工透析が必要になりますが、そのような人は増え続けていて、地方では近い将来、透析に対応できる病院や医療スタッフが足りなくなることが予想されています。この研究を通して、将来の患者数を予測して最適な病院の配置を考えたり、糖尿病予防策を考えたりすることがとても重要です。
データヘルスの研究では、課題を解決するために「将来の予測」がカギになることが多く、生成AI、ベイジアンネットワーク(データの因果関係を分析する手法の一つ)など最新のAI技術を用いた研究も行われています。
必要な人に必要な医療を届けるには?
電子カルテ、Web予約システムなど医療のデジタル化が進むと、患者はよりよい医療を便利に受けられるようになります。コロナ禍でオンライン診療システムの利用は進みましたが、地方に住んでいて病院まで遠い人たちや、通院が難しい高齢者や障害者が使いやすい状況にはまだなっていません。デジタル化のメリットを多くの人たちに届けることも医療情報学の大きな役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 保健科学研究院 教授 小笠原 克彦 先生
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