講義No.06278 史学・地理学

失敗から、未来への正しい選択を学ぶ歴史学

失敗から、未来への正しい選択を学ぶ歴史学

現代社会のキーワードは「近代」

歴史学において「近代」における「ファシズム(全体主義、国家主義)」は、今の日本の社会を考える際の重要なキーワードです。近代以前、人々は血縁やムラといった、自分では選択できないある種の価値を共有するグループの中で暮らしていました。その息苦しさから自由になりたい、好きな土地に住んで好きなように生活したいと行動を始めたのが近代です。しかしその結果、個人はバラバラになり、誰とも価値を共有することができないという問題が新たに起こってきました。そこに「こういう方向性で、みんな団結しよう」というイデオロギーを与えたのがファシズムでした。

「近代」の問題は今も

結局、ファシズムは間違っていました。しかし、「個人がバラバラになってしまったから何とかしよう」という問題意識そのものは間違っていません。しかし、ファシズムが失敗したために、今その問題までがなかったことになってしまっています。例えば東日本大震災の後、「家族の絆」「地域の団結」という言葉がよく聞かれるようになりました。地震や原発事故という大きな問題が起こり、本当なら次の時代に向かって新しい人間関係を作ろうと前へ進むべきだったのに、また後ろ(近代以前の考え方)に戻ってしまった状況は、ファシズム直前と似ているのです。

歴史学は未来を照らす学問である

失敗の歴史は繰り返してはなりません。しかし、「戦争反対」というスローガンだけでは戦争はなくなりません。なぜ戦争はダメなのか、私たちは自分の問題として考える必要があります。スペインの哲学者オルテガは「過去は何をしたらいいかは教えてくれないが、何をしてはいけないかは教えてくれる」と言いました。私たちは失敗の歴史から、どこで間違ったのか、原因は何かなどを学び、正しい選択をすることができるのです。
歴史学は、今の私たちがよりよい社会を築くために何をすればいいかを考えるためにある、未来志向の学問なのです。

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先生情報 / 大学情報

京都精華大学 国際文化学部 人文学科 歴史専攻 教授 岩本 真一 先生

京都精華大学 国際文化学部 人文学科 歴史専攻 教授 岩本 真一 先生

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歴史学、日本思想史学、人文学

メッセージ

京都精華大学の人文学部には、文学専攻、歴史専攻、社会専攻があり、私は歴史専攻を担当しています。歴史を学ぶために、文学や社会のことを知ることもできるのが、人文学部の強みです。
あなたへのアドバイスは、「周りにアンテナを張り巡らせて、当たり前とされていることにも異和感をもち、常識を疑ってみる」ということ。大学の研究はそういうところから始まるからです。その最初の一歩を踏み出してくれれば、私たちは後押しを惜しみません。幅広い視野で人文学を学びたい、京都で歴史を学びたい、そんな人に来てほしいと思います。

京都精華大学に関心を持ったあなたは

京都精華大学は、アート、デザイン、マンガ、音楽、ファッション、文学、歴史などが学べる「芸術と文化」の総合大学です。さまざまな分野を学ぶ学生、海外からの留学生が集まる多様性溢れるキャンパスです。本学では、あなたの好きなことや得意なことをきかっけに、個性を大切にしながら、それぞれの「専門性」を高める教育をおこなっています。そして、学生同士、学生と企業、学生と社会といった組み合わせで、「共に学ぶ」プログラムにも取り組んでいます。あなたの好きや得意をいかして、一緒に新しい未来を創りませんか?