失敗から、未来への正しい選択を学ぶ歴史学
現代社会のキーワードは「近代」
歴史学において「近代」における「ファシズム(全体主義、国家主義)」は、今の日本の社会を考える際の重要なキーワードです。近代以前、人々は血縁やムラといった、自分では選択できないある種の価値を共有するグループの中で暮らしていました。その息苦しさから自由になりたい、好きな土地に住んで好きなように生活したいと行動を始めたのが近代です。しかしその結果、個人はバラバラになり、誰とも価値を共有することができないという問題が新たに起こってきました。そこに「こういう方向性で、みんな団結しよう」というイデオロギーを与えたのがファシズムでした。
「近代」の問題は今も
結局、ファシズムは間違っていました。しかし、「個人がバラバラになってしまったから何とかしよう」という問題意識そのものは間違っていません。しかし、ファシズムが失敗したために、今その問題までがなかったことになってしまっています。例えば東日本大震災の後、「家族の絆」「地域の団結」という言葉がよく聞かれるようになりました。地震や原発事故という大きな問題が起こり、本当なら次の時代に向かって新しい人間関係を作ろうと前へ進むべきだったのに、また後ろ(近代以前の考え方)に戻ってしまった状況は、ファシズム直前と似ているのです。
歴史学は未来を照らす学問である
失敗の歴史は繰り返してはなりません。しかし、「戦争反対」というスローガンだけでは戦争はなくなりません。なぜ戦争はダメなのか、私たちは自分の問題として考える必要があります。スペインの哲学者オルテガは「過去は何をしたらいいかは教えてくれないが、何をしてはいけないかは教えてくれる」と言いました。私たちは失敗の歴史から、どこで間違ったのか、原因は何かなどを学び、正しい選択をすることができるのです。
歴史学は、今の私たちがよりよい社会を築くために何をすればいいかを考えるためにある、未来志向の学問なのです。
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