中世の地域社会の実像を解明し、未来につなぐ
現代社会の原型が生まれた中世
およそ院政期から戦国期までにあたる日本の中世では、“首都”としての京都を中心に経済が大きく発展しました。一方、列島各地でも、民衆の力とともに地域社会独自の経済が芽生え、都市・市場・港湾などがいたるところに生まれました。そして、こうした無数の都市的な場はまるでアメーバのように誕生と消滅を繰り返しながらも、やがて相互に連結し、社会のネットワークを形成します。つまり、数世紀にわたる中世は、私たちの社会の原型を創った躍動的な時代といえるでしょう。
中世社会の実像を解き明かす
中世に生きた人々の活動は、とてもエネルギッシュでした。例えば、日本列島は周囲を海に囲まれていますが、この時代、各地で海運業が発達しました。海に生きた民衆の活動であり、さらに航海の安全のために無数の寄港地が必要とされました。潟湖(ラグーン)などの自然地形も利用して、多くの港湾が誕生します。
ところで、中世の人々が創り出した都市・市場・港湾などの場は、20世紀以降の開発の波に飲まれるなどしたため、そのかつての姿を捉えることは案外に容易でありません。また、こうした都市的な場は古文書などの文献史料に現れるものの、文字情報だけでは数百年前の人々の眼前に広がっていた情景を正しく想像できません。
彼ら・彼女らが創り出した世界を理解するためには、現地を歩き、空間的に過去の景観を捉えることが重要になってきます。そのなかで、あなたが生きる社会の歴史も見えくるでしょう。
歴史と文化をめぐる危機の時代のなかで
現在、日本社会は大きな転換期を迎えています。少子高齢化・過疎化・限界集落化が進み、かつての共同体が驚くべき速度で失われつつある時代に突入しています。中世から1,000年ほどの時間をかけて築き上げられた地域社会は、今後、わずか10年か20年のうちに消滅してしまうかもしれません。
そのため、現地調査ともに、私たちの時代に残された多様な遺産を次の時代へと伝えることは、歴史学の重要な使命となりつつあります。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 人文社会科学部 社会学科 准教授 貴田 潔 先生
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日本中世史学、地域社会史学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?